ショートショート まとめ
俺はカードの右下を指差した。そこにはポイントのマークの一回り大きいものがあった。
「はい、そこです。そこに指を押し付けて下さい。」と男が言った。
俺は指をそのマークに押し付けた。カードが一瞬光ったような気がした。
「はい、完了です。ではいい一日を」と男は言って立ち去った。
俺はサービスエリアのコーヒーを飲みながら、先程のカードを眺めている。発行所もなく、ポイント発生の条件も満点の特典も書いてなかった。
何だか訳のわからないカードだな、と思いながらそれをしまった。
そんなカードがあったことを忘れた頃、黒服は現れた。
「ポイントが発生しました。カードを拝借します。はい、ありがとうございました。」
俺は、返されたカードを見た。蛍光色のスペードが3つになっていた。
俺はどうしてポイントが発生したのかわからなかった。運転技術も態度も、普通のドライバーだった。無事故無違反だし、それぐらいならいっぱいいる筈だった。
それから数ヶ月たった頃、またポイントが発生したといって男が現れた。ポイントが7になった。ポイント点数もばらつきがある。
俺は黒服が現れた3度のシーンを思い出し、その前の共通点を思い出そうとしたが、車に乗っていたことしか思い出せなかった。強いていえばサービスエリアかなと思ったが、それは黒服が現れた場所で、最初の話ではそれ以前にポイント発生の何かがあるニュアンスだった。4度目のポイント発生も理由が思いつかなかった。
高速道を走っている俺の車をパトカーがサイレンをならして追い越していった。俺は身体が緊張していくのを感じていた。
横転したトラックに突き刺さった乗用車をみながら、俺は昂揚感を感じていた。自分も可能性がある恐怖感と、恐いもの見たさ、それを見ている側にいる安心感とが混じり合って、不謹慎とも思える気分がたまらなかった。
ゆっくりと車を走らせ、しっかりと脳裏に刻み込んだ。
いつものことながら、そのあとサービスエリアに寄ってコーヒーを飲んでいる。
「あれ、何かヒントが」と俺は、以前から疑問に思っていたことが解りかけた気がして、気持ちを集中した。
「何だったんだろう。このシーンかな」とコーヒーを飲みながら、黒いカードのことを思いついた。俺はカードを取り出した。たった今ポイントが発生したカードのポイント数は満点になっていた。
「どんないい事がおこるのだろう」と思った時、疑問が解けた。
作品名:ショートショート まとめ 作家名:伊達梁川