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城好きのマスター

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 そして、マスターは、今日も、喫茶「キャッスル」をいつものように経営している。何か違和感があると思っているが、アレルギー患者が出たことも、財布をすられたという意識があったことも、まるで、遠い過去のようで、覚えてはいるが、
「忘却の彼方にいってしまった」
 という思いであった。
 数年後に、引退したマスターは、息子に店を譲っていた。
 そして、年を重ねてきたにも関わらず、店に来ると、自分が経営者だという意識が消えなかった。
「大好きな城でいえば、現存天守というよりも、復興天守のイメージの方が強いな」
 と感じていた。 だが、
「できれば、現存天守がいいな」
 と思った時、そこに見えたのは、ずっと忘れることのできない、竜宮城から帰ってきて、年だけは取っているが、死ぬことができない。あのパラレルワールドの自分の姿だったのだ……。そして、その姿が、平蔵と同じであることを知っている人は誰もいないのだった。

                 (  完  )
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作品名:城好きのマスター 作家名:森本晃次