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色々な掌編集

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怒りを排出するためにはエネルギーを使う。膨大なこのエネルギーを利用することができれば……という発想で研究が進められ、装着したヘッドフォンによって集められた電流は電力会社に送られて電力になるという。またブース内の床や手すりなどにも力が入ったそのエネルギーで発電機を回し電力にする。まさに夢のような話であった。それがあるから参加者にボーナスが出るということだった。仕組みとしては悪くないとオレは思った。開放感あるいた軽い達成感のような感情を得て商品券が貰えるというのだから。

《怒りの日》ボーナスは約1か月後に各自治体より送付、もしくは窓口で受け取れる。その金額分、地元で使われるわけだからこれも悪くない。そんないいことずくめで国が動いていたら《怒りの日》などはいらないことになる。しかし、《怒りの日》が終わって穏やかな日常が続いても、不満や怒りは次第に貯まってくる。やはり景気があまりよくないまま安定してしまったのも原因だった。また景気にかかわりなく政治がやるべき問題が放置されていることも原因だろう。

オレはまだこの《怒りの日》がいいのか悪いのか判断できないでいた。だが、参加しない手はない。すっきりしない気持ちのままこの日を待ち望んでいるのだ。

           *               *     

《怒りの日》は毎年順調に行われ、まったく問題が無いと思われていた。電力全体に占める原子力発電の比率が下がるに比例するように怒り電力が増えていった。

だが、その電力に不安定さが顕れたのである。均一である筈の電流・電圧のバラツキ。灯りでさえチラツキで不愉快になる。まして工業生産には致命的な欠陥である。不良品を量産してしまう。調査の結果、理由は不明だが、怒り電力のみに現れる結果だった。

           *               *   

《怒りの日》が無制限停止状態になっているが、《怒りの日》自体は各地区とも存在している。まだ有効な対策は見つかっていなかった。オレはスッキリしないまま参加していた《怒りの日》のシステムはやはり欠陥があったかという思いと、言葉に出来ない強い怒りが身体に充満しているのを感じている。

《怒りの日》が来た。オレは何者かに操られているかのように、いつもの会場に向かっていた。途中でやはり怒りで充満しているのだろうと思える顔の人達に出会った。彼らの目的と自分の目的はたぶん同じであろうと感じた。次第に人数を増した人々は、通り道にあった公民館になだれ込み、窓を割り、机をひっくり返して、また歩き出した。まだまだエネルギーは有り余っているとオレは感じた。

市役所が見えてきた。もうすでに人々が暴れ廻ったのだろう、煙が見え、消防車とパトカーのサイレンが聞こえる。

もう何万人かの人数になったであろう暴徒に、警察も手を出せない。どころか警察官の制服のまま暴徒の群に入って歩いている者もいる。上空からはヘリコプターの音が騒ぎを煽るように、やかましい音をたてていた。
作品名:色々な掌編集 作家名:伊達梁川