続・おしゃべりさんのひとり言/やっぱりひとり言が止めらない
その200 ヤマトマン
年齢が一桁くらいの頃、スーパーヒーローを夢見てた頃、僕の前にヒーローが現れるのを待ち望んでた。
でも、僕自身がそんなヒーローになりたいと思ったことがない。
どっちかって言うと、秘密基地でヒーローたちに「出動だ!」と言う司令官に興味があったから。
でもそんな役どころって、結構地味な裏方のおじさんでしょ。
カッコいい司令官なんて、この世には存在しないんだよな。
『ひとり言』を言い続けて、200回を迎えました。
1回目から読み返すのは時間がかかりすぎるけど、タイトルだけ見直していくと、それらすべて個々の内容は覚えてる。(当然っちゃ当然)
その中でも度々登場するのが、『ボス』って人物。
生前とてもお世話になって、僕の生きる目標だった人。
ものすごいお家柄でお金持ちの成功者。人格者。やさしい。頼りになる。スマートでダンディ、ニヒルでちょっぴりアヒル・・・?
僕の行動のお手本になってくれた人です。
名前はヤマトさん(仮名)ということで、この方の超人ぶりから『ヤマトマン』というあだ名で呼ぶこともありました。
僕は誰からも「まめに動くね」って言われるけど、ボスに比べたら怠け者です。
僕は休みの日は家にいることもあるけど、ボスはほとんど家にいなかった。
僕はせいぜい車で5時間くらいの範囲でしか行動しないけど、ボスは世界中を飛び回ってた。
僕の睡眠時間は6時間くらいだけど、ボスは4時間半が平均だったそうだ。
ボスの付き人をしていたころは、僕の名刺も一ヶ月で100枚消費していた。
ボスと同じペースで動くと、それくらい初対面の人と出会ってたってことです。
当然顔は広くなるし、後にこの人間関係のネットワークはいろんな面で役に立った(感謝)。
個人秘書を任命されてからは、絶対にミスが許されない緊張感で、何億ってお金を動かすことも。(実際僕は見守るだけですけど)
僕は元銀行員だから、大金を目にする機会は結構あったけど、せいぜい数千万円。
億ってお金は目の前には存在しない。それは計算上の金額で、集中力が切れると、うっかり忘れてるってことがある。
そんな場合の損失って計り知れないでしょ。絶対に緊張が解けないんだよ。
そのおかげで、僕は自身のビジネスでもお金に集中力を発揮できた。
ボスとは何の関係もないうちの(今所属してる)会社の会長とかも、お金にはうるさいけど、集中力とは違って執着心が強いだけ。こんなふうに世の中には、売上を伸ばすとか利益を上げるとかより、損をしたくないって考え方の人が多いと思う。
ボスみたいに、散らばった小銭を集約して、まとまった資金として使う。うまく活用してさらに儲ける。投資して損失が出ても、それをスタートに据えて絶対に取り戻す。今の僕の会社じゃこんな考えにならないから、僕のスピード感には周囲にブレーキをかけられ続けてきた。
ボスはビジネス以外じゃ、趣味が無茶苦茶多い。遊びもパワフル。
文化的には、楽器、演劇鑑賞、陶芸、絵画、写真、カラオケ。
スポーツは、テニス、ボウリング、卓球、スカッシュ、マラソン、3オン3(3人バスケ)。
高校時代はボート部だったそうだから泳ぎは得意で、カヌー、ウィンドサーフィン、ヨットも本格的に教えてくれた。冬前の時期でも落水してたぐらいの真剣トレーニング。
冬はスキー、スノボ。特にスノボは、1998年の長野オリンピックの前なんか、「まだスノボはスポーツとして未熟でレベルが低いから、真剣に目指せば誰でも日本代表になれる」とか言い出して、大勢で本気で取り組んでた。
実際、元体操部の僕から見ても、当時のハーフパイプの空中技は、体操素人レベルのアクロバットに見えたから、あながち嘘じゃなかったんだよな。でも仲間からオリンピック出たやついないけど。
旅行は毎月くらい行ってたかな。
僕もたまに海外まで、スキューバダイビングやシュノーケリングに連れて行ってくれることもあった。水泳なら僕もスイミングスクール出身だから、二人で泳ぐと必ず競争になるし、潜水も10メートルぐらいの深さまで(多分だよ)素潜りで競ってた。
美味しいものを食べ歩くのも趣味みたいだったから、いろんな店で食事も同席させてくれたし、それら全部が僕の見識を広めるきっかけになってる。
大勢のグループで、様々なイベントやボランティア活動にも参加して、暴れまくってきた印象だ。ボスがいなかったら、絶対に経験できないことばかりだった。
ボスこそ、僕にとってのスーパーヒーローだったんだ。
今の僕はボスには到底及ばないチンケな存在だけど、この人のおかげで、素晴らしい人生になったと思う。
僕の仲間たち(ボスの事務所から巣立ったOBたち)も皆そう感じていて、その表情はいつも自信にあふれている。
そこが一般社会と違うところだな。
僕らも一般人なのに、脳みその中身は別次元だと思ってるのは自惚れじゃなく、ボスの考え方を僕らの脳みそにコピペし続けてきた結果が、各々のビジネスの成功につながって、仲間意識は強く、家族ぐるみの付き合いも深くなりながら、趣味の幅はどんどん増えて人生の満足感に・・・自然とそう感じるんです。
ボスはもうこの世にはいないけど、そのビジネスは長男が引き継いでる。
僕は彼を30年来、小学校から知ってるし、高校進学の時もそばで応援してたし、卒業してからはアメリカ留学の手続きも僕がサポートしてやった。
中学から彼をぞっこんに追っかけ続けてたクラブの後輩女子は、大人になっても長男に会いに自宅に顔を出すもんだから、僕も隣の事務所で親身に相談に乗ってやってるうちに情も湧くし、その事務所の仕事を手伝ってくれはじめてから、後のボスの秘書としてまで立派に育て上げた。
でもその女性と長男との仲は、うまくまとまることはなかった。
それに長男はやっぱり2代目だ。ボスとは違ってチャラケてる。
それでも彼をサポートする若いブレインはいっぱいいるし、もうそろそろ僕らの出番はなさそうだって、OBの仲間内で話してたら、
「もう、ヤマトマンみたいな人は現れんやろな」と、一人が言った。
「そうやな、ヤマトマン2世(長男)は、ちょっと甘ちゃんやし」と僕が言うと、
「お前がなれよ」って僕に振って来る。「俺らはもう歳やし動き回れんけど、お前はまだ50代やろ」って。
「それはそうやけど、もう何もすることないで」と、そんなの遠慮してしまう僕。
「秘書やってたお前がせんかったら、誰がボスの脳みそ(考え方)受け継ぐねん」
その事務所は、大黒字も黒字、真っ黒けの暗黒です。(←悪い意味じゃないよ)
でも今は資金的に問題なくても、自由気ままな個人企業で、つまり、余裕ぶっこいてサボりがちな体質に思える。
ヤマトマンはそうならないように、常に夢を追い求めて動き回ってたんだった。
2世や若いスタッフたちにもそうなってほしい。
OBで話し合ってたのは、(その考え方を示していく必要がある)ってことだ。
「ご意見番でええやん。ヤマトマンもそうやった」
若い彼らにはまだ知らない世界や、行きにくい場所もあるだろうし。
そうか。僕が『ヤマトマン2号』になってもいいのかな?
いや違う。僕らOBが司令官になるべきなんだ。
「それなら皆で、ヤマトマン戦隊組んだらええやん」