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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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続・おしゃべりさんのひとり言/やっぱりひとり言が止めらない

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その198 ゆび



あれ?
これ、僕の指じゃない・・・???

指に指紋あるよね。
でも世界に二つは、同じ指紋ってないんだよね。
人ひとり分の指紋は10個とも、いや、足の指も入れると20個全部違うパターンなんでしょ。
僕はそのことを知らなかったから、(僕の指紋は僕だけのもので、全部の指が同じ渦巻き模様なんだ)って勘違いしてた。小学校6年の時まで。

その小学6年の修学旅行。楽しかったなぁ。
それを一生記憶に留めたいと思った。
旅行から帰って約一週間くらい、毎日の時間割りを1~2時間使って、『修学旅行記』を作る授業があったんだ。
400字詰め原稿用紙に、旅の行程や感想、細かなエピソードを文章化していく作業って、後の作文能力を大きく向上させたんですよね。
僕は得意の絵を描いて挿し絵にしたり、博物館や水族館の入場券とか、ちょっとした栞やカード、包み紙みたいなものを貼り付けたりしてた。
家でも書いて来る宿題にもなってたわ。
結果、僕は原稿用紙100枚以上書き上げて、厚さ1センチ以上の冊子ができたよ。
その時、はじめてペンダコもできた。
右手中指の爪の左側が腫れて、すごく痛かった。絆創膏巻いて書いてたもん。
それから、中学受験のためにいっぱい勉強しないといけなかったんだけど、字を書くのが億劫じゃない自分になってたから、とにかく書いて勉強するクセがついた。
つまり、ペンダコはどんどん成長していったんだ。

するとね。半年くらいの期間で、右手中指の形がどんどん変形していって、(僕の指じゃない)って思えるくらいになっちゃったんだ。
ペンダコは小さいコブみたいだし、爪もペンダコに押されたように左に傾いて生えるようになってきた。
そんな折り、ふと指紋を見たら、なんと右手の中指だけ渦巻きが斜めに傾いてることに気付いたんだよ。
ペンダコによって傾いた爪にシンクロするように。
よくその指紋を観察すると、渦巻きも途切れてて、斜めの波形模様になってしまってたんです。
僕が単に、指紋は(渦巻きなものだ)って信じてて、(渦になってない波形もある)って知らなかっただけだけど。
だから他の指紋、足も含めて全部確認したら、右手中指の指紋だけが波形で心配になってしまった。
爪側を見てもペンダコのせいでいびつな形だし、この指だけ異常としか思えない。
(もしや! 僕の知らないうちに、宇宙人に人体実験されて、右手中指の第一関節から先を付け替えられたんだ・・・)そう疑って友達に話すと、このファンタジーが注目の的に。
そんな心配は、母さんに相談して大笑いされ、学校の先生にまでバカにされ(この担任キライ)、すぐにそれで正常だって知りましたけどね。

話変わって、小5から中3までの5年間、僕はバスケをしていて、あの大きなボールをつかむために、両手の指を思いっきり広げてプレーしていると、指がだんだんと反りかえってきたんです。
第二関節なんて45度くらい外側に曲がるようになったから、手袋を左右逆にはめて、手のひらを上に返し、指を思いっきり下に反らせると、まるで軽く力を抜いた手の甲のように見えるんです。
それで手品と称し、中学校の教室のカーテンに隠れて手袋した手だけを出して、その手の上(手の甲に見える手のひらの上)にミカンを載せてもらって、一気に掴んだら、
「うっぎゃ―――!!!」
指が手の甲に裏返ったように見えるんで、友達の大絶叫が廊下まで響き渡ってた。

こんなに指が反る人、僕以外に見たことないよ。
それで指自体も結構細くて長かったから、中一から仲のよかった恵美莉(長編シリーズ『EMIRI』の主人公のモデルにした親友)が、いつも「指キレイなあ」って触ってくれてたのが嬉しかったんだけど。
・・・爪よ、爪が。あのペンダコ曲がり爪がよ。
それが不格好で恥ずかしいぃぃ。彼女、面白がってそのペンダコを触るんだよ。
しかも指紋も何度もマジマジと見られるし、この宇宙人に移植された右手中指第一関節から先は、まじコンプレックスでした。
それからも年月と共に、爪の表面が筋状に凸凹ガタガタになってきて、ますますキメェ感じ。

ある日突然、その指先に転機が訪れます。
僕が結婚する直前のこと。僕のパートナーと、その他二組の友達カップルと海に行ったんだけど、その時僕はうっかり、友達の車のドアに指詰めしちゃったんです。
指なんて普通挟みませんよ。右手でドア閉めるのに右手の指なんか、どうやって挟んだのかもう覚えていませんが。
ただ、その車がフォルクスワーゲン(確かゴルフ4)だったんです。
(それがどうした?)って思われるかもしれませんけどね。その車は、当時頑丈さで定評のあるボルボよりしっかりしたボディ剛性の車だったもんで、フレームが歪みにくいことを売りにしてて、前席と後席のドアの隙間なんて国産車なんか比にならない、わずか2~3mm しかない状態だったんですよ。
そこにあの右手中指の第一関節から先を挟んじゃいました。
指と爪の間から血が吹き出しますわな。痛かったですよ~。
それからしばらく、爪は内出血で真っ黒になり、治療中に剥がれて全部取れてしまいました。

それから何ヵ月かかかって、その爪は再生したんですけど、嬉しいことに、今度は筋張らずにキレイな爪が真っ直ぐに伸びて来たんです。
指が潰れたお蔭か、ペンダコも徐々に縮小していったし。
それ以来、爪切りは最小限に留め、全部の爪を伸ばしています。チンチクリンの短い爪にならないように。今の爪、大事にしてるんです。
痛い思いしたけど、キレイに再生して、右手中指のコンプレックスは無くなったという訳です。
宇宙人の指紋は、今もそのままだけどね。