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さよなら、カノン

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#11.エピローグ



カフェスタンドが併設されているテレビ局の1階アトリウムでミーティングをする正樹
番組制作会社を相手に持ち込み企画をプレゼンする正樹
カフェスタンドでは宮田が立ったままカップを片手に壁掛けテレビを見ている
ガラステーブルの上にホットコーヒーが運ばれてくる

正樹  「過去3年のチャンネル登録者数と配信視聴者数のグラフです。年々増加していってるのがわかると思います・・・」

資料を指し示しながら制作会社に説明する正樹

制作  「なるほど・・・」

正樹の携帯電話に着信を知らせるジングルが鳴る
説明を続けながらチラっと携帯を開き発信者を確認する正樹
”福住愛子”とあるのを見て携帯電話を閉じる正樹

制作  「構いませんよ、電話に出ていただいても」
正樹  「いえ、急ぎではありませんので」

プレゼンを続ける正樹
壁掛けテレビに映しだされたニュースを見ながらカフェスタッフに話しかける宮田

宮田  「ほんと気の毒な話だよな。土砂崩れに巻きこまれるとは」
スタッフ「本当に。不運としか・・・」
正樹  「スラムダンクの例を見てもやはりバスケットボールには根強い人気があります」
ニュース「ダムの関係者が早朝、神楽山付近の取付道路で大規模な土砂崩れが発生しているのを発見し・・・」

ニュース音声が無意識のうちに正樹の耳に入ってくる

正樹  「確かに女子のスポーツ界に順風が吹いているとは言い難い。ですが・・・」
ニュース「・・・クレーンが到着し滑落した車が引きあげられました。車の中から成人女性と幼い子どもが救出されましたが、その場で死亡が確認されました。警察はふたりの身元確認を急いぐとともに・・・」

耳から入るニュースに気を奪われる正樹

制作  「どうかされましたか」
正樹  「いえ」
ニュース「引きあげられた車の車種はサーブ96。車体の色は・・・」

立ちあがってテレビに視線を送る正樹
神楽沢湖上空を飛ぶ報道ヘリからの空撮映像
毛布を被せられた大小の2台のストレッチャーが搬送される
スクラップのようにへしゃげた黄色い車体
戦慄する正樹

作品名:さよなら、カノン 作家名:JAY-TA