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さよなら、カノン

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#1.プロローグ



体育館の床面を機械式の専用モップが清掃する
電源コードがドラムに巻き取られる
無人になった体育館の照明が一斉に落とされる


暗闇を移動する微かな二つの光
車のヘッドライトが道沿いにぽつんと建つ無人販売所をかすめる
夜の県道を走行する車のハンドルを握る吉川実穂子
ニュースが終わりトークが始まる前にラジオのスイッチを切る実穂子
実穂子の横顔に諦めと焦りの色が滲む
車は里山を滑らかに蛇行する県道を走行する
車のヘッドライトが山裾を切り拓いたバスロータリーを照らしだす
バスロータリーの奥まった場所にあるバス停
バス停の表示板「龍神口」が一瞬ヘッドライトに照らしだされる
ヘッドライトがバス停の奥にある粗末なベンチに届く
ベンチには簡易や屋根が掛けられいる
屋根の傍に立つ古い街灯が弱々しく灯っている
バスロータリーの前を通り過ぎる車
実穂子の目が大きく開く
急ブレーキをかけ車を道路脇に停める実穂子
慌てて車を降りる実穂子
バス停のベンチが見える所まで駆け戻る実穂子
ベンチに目を凝らす実穂子
ベンチに伏して倒れている少女に気色ばむ実穂子
少女の小さな足が地面から浮いている
褪せたピンク色の靴が脱げかけている

実穂子 「(呟くように)カノン・・・」

県道を猛スピードで走るトラック
ベンチを見据え前のめりになる実穂子
トラックのライトが実穂子の視界を遮る
クラクションを鳴らし走り去る車をやり過ごして県道を横断する実穂子
クラクションの音に目覚め薄目をあける吉川カノン
ベンチに手をつき上体を起こすカノン
自分の名前を呼ぶ声が聴こえた気がして車道のほうに顔を向けるカノン
判然としない薄暗い景色
淡い光の中に朧気に浮かぶ実穂子の立ち姿

実穂子 「(絶叫するように)カノン」

その声に目をこすりながら声を発しようとするが声にならないカノン
カノンの唇が”マ、マ・・・”と動く


作品名:さよなら、カノン 作家名:JAY-TA