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3つの博物館訪問

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ところで私が火焔土器として認識していた土器ですが、この山梨県周辺から出土した土器は「水焔(すいえん)土器」と呼びます…とは入口で対応してくれた女性の弁。
 
初めて水焔土器という名称を聞きましたが、見た目には火焔なのか水焔なのか区別はつきません。他のエリアとの違いを強調したいのだろうと思いましたね。
 
目玉になる水焔土器が単独のガラスケースに入れてありましたが、確かに迫力があり、一見の価値は十分にありました。
 
そして、ここの博物館の土偶は10センチほどのサイズで、特に大きいものは見当たりません。しかしユニークな顔付きが多く、しかも大半は割れています。一つの説として土偶はわざと割ってしまうもの(人の代わりに災難を受けるもの)と考えて作られたのかも知れないと言われます。
 
また、我々が普段見過ごすような小石ほどの土器のかけらなども多く、丹念な掘り起し作業をされていると思うと、遺跡探しに対して熱の入れ方が分かるというもの。その努力が数千点もの展示物になっています。
 
さすがに縄文遺跡のものだけを展示してある博物館だと感心しながら1時間以上の滞在時間でした。
 
大体午前中の滞在時間、その間に7〜8人の来館者がありましたが、やはり交通の便が悪いからなのか、内容がマニアックからなのか、入場者が少なくてせっかくの縄文博物館のスタッフの方も手持無沙汰の感があり、何だか勿体ないと思いましたね。採算は取れていないでしょう。
 
さて、そんな風に訪れたまでは良いものの、この山梨県の片田舎からその日のうちに新潟県長岡市まで移動する交通手段も難題でした。 
中央高速道の釈迦堂SAからJR中央本線の甲府駅方面への高速バスは午後3時頃まで便がありません。
 
幸い2キロほど離れた一般道路に、何とか田舎のコミュニティーバスが停車するバス停があるのを調べていましたが、それでも昼食時間も併せて2時間ほどを釈迦堂SAで過ごす羽目になりました。
 
その後は勝浦のブドウ畑を左右に見ながら20分ほど歩いてやっとそのバス停に到着。1日3便しかないコミュニティーバスに乗って最寄りの駅である塩山駅まで凡そ40分。塩山駅から甲府駅まで約10分。甲府市では30分ほどの待ち合わせでやっと中央本線の特急に乗車出来ました。



◆新潟県立歴史博物館(新潟県長岡市)

甲府駅から午後2時40分発の「特急あずさ号」で八王子駅、そこから大宮行きの「むさしの号」に乗り換えて大宮駅、さらに新潟行の「上越新幹線とき号」に乗り換えて、午後7時半頃にやっと長岡駅に到着しました。
 
6月とは言え、新潟ではそろそろ暗い時間。予約していたホテルは駅から徒歩数分でしたが着く頃はすっかり暗くなっていました。

それでも強行移動した日程を終えた安心感もあり、ホテルの部屋に入ると空腹感を覚えました。休憩する間もなくホテルを出て長岡駅近辺の食事処を探すと、それらしい居酒屋を発見。
開き戸をあけると大きな部屋が3つも4つもあるようでワイワイガヤガヤ…大いに盛り上がった店内に、やっとカウンターの隙間に一人分のスペースがあったので助かりました。
 
ところがそのお店のポリシーなのか、料理のボリュームが半端なく多くて、何と一部の料理を残してしまうことになったのです。
 
佐賀のお店の感覚で注文。佐賀では厚揚げは豆腐半丁くらいのサイズが普通ですが、ここの厚揚げは私のイメージより2倍くらいのサイズです。
という事は、前もって注文した他のメニューもそうかも知れん…と思ったのですが全くその通りで、食べ物を残さない主義の私も、ついに一部を残してしまいしました。
 
清算の時にお店のスタッフに訳を話すと了解はしてくれました。知らない土地での注意事項もいろいろあるのですね。

さて翌朝は博物館行のバス待ち合わせの時間があったので、長岡市内を1時間ほどブラブラ歩いてみました。人口は佐賀市より少し多い約26万人。
 
長岡駅の外観はいかにも歴史がありそうで、さすがに越後第2の都市です。昨日新幹線から降りた時は気付かなかったのですが、結構サイズが大きい。駅舎から接続した駅前は雪の対策の為でしょうか2階が屋根付きの回廊になっています。
 
その回廊の先には長岡市役所のサテライトスペースと思いますが、すごく広くて4〜5階まで吹き抜けたようなユニークな形の広場に驚かされました。
 
目の前の大通りには「火焔土器」のモニュメントが設置してあり、やはり縄文時代をアピールすることは長岡市の目玉の一つのようです。
 
長岡駅から県立歴史博物館まではバスで40分。数人の乗客を乗せて運行する途中、信濃川を横断。あの有名な長岡の花火大会の会場付近だったかも知れません。
 
到着した歴史博物館は長岡市の郊外と言うより、まさに自然の中に建っている本格的な博物館です。
 
建物の規模も大きく多岐にわたる展示物がある中で、特に縄文時代の文化をテーマパークのようにしっかり紹介してあります。
6つほどのコーナーに分けたスペースには縄文土器や土偶は勿論の事、「縄文文化のハイライト」とも言える当時の生活の様子を具体的に分かるようなジオラマを10カ所ほども展開してあります。
 
ジオラマでは竪穴式住居は勿論、狩猟や海辺や料理や生活の場面など、人物は蝋人形を使ったリアルな姿で紹介し、臨場感と相まってあたかも近所に迷い込んだ感覚でした。
展示物も数千点の土器や土偶など他にも、丸木舟や人骨などを展示してあり、今回訪れた3カ所の博物館の中では、こちらが最も充実していました。
 
遺物を見るだけでなく、当時の生活を再現した場面を感じる事は異次元のスペースに入り込んだ感覚で、大いに見聞する価値がありました。
 
土偶についても「縄文ヴィーナス(国宝)」「東北ヴィーナス(国宝)」「中空土偶」「そんきょ土偶」…など、縄文時代を代表する魅力的な土偶があります。縄文時代を紹介する本の中にそれらの写真が掲載されていて、まさにその実物に会えたのです。
 
東京の国立博物館で見た遮光器土偶も感激しましたが、テーマに沿った展示方法や物量的には圧倒的なボリュームがあり、こちらの方が楽しかったですね。
帰りのバスの時間がなかったらもう少し滞在しても良かったのです。
 
ところで、長岡駅〜県立歴史博物館のバス便は1時間に1本。ここに到着して1時間半くらい見学した訳ですが、その日は午後4時頃には次の宿泊地・新潟市に行く予定を立てていたので、そろそろ長岡駅まで戻る必要がありました。
 
帰りのバスでは、「縄文文化に触れるために一人で東京から来ました。」と言うアラフィフの女性との会話になりました。日帰りでの見学だったようで、やはりマニアにはその博物館は人気があるようです。
 
新潟県は縄文時代の発掘物が多く、お隣の十日町にも同様に縄文遺跡博物館があると聞きました。もし同じ様なレベルの展示物があるなら、新潟県もまさに縄文時代の遺跡の宝庫だと言えます。
 
今後は本命の縄文遺跡、青森県の「三内丸山遺跡」を訪ねようと思いますが、九州の佐賀からは結構遠いので、それだけの為に行くのも勿体ない。
 
作品名:3つの博物館訪問 作家名:上野忠司