ビワイチ(続・おしゃべりさんのひとり言 109)
本番の日の早朝、20人ほどがお揃いのゼッケンを着けて、琵琶湖南西岸にある大津市の膳所(ぜぜ)城址公園に集まりました。
そこをスタートしてすぐに近江大橋を東へ渡り、湖岸の景色のいい(ドライブでなら)快適な道路を北上し、各々のペースで走ったり歩いたり。
すぐに皆、汗だくになります。朝の早い時間でも汗が止まらない感じ。きっと昼には炎天下での地獄が待っているんだ。
皆一枚ずつ協賛企業から提供されたゴミ袋を持って、落ちている空き缶やペットボトルを拾います。
先頭グループはすぐにゴミ袋一杯になり、もう拾うことが出来ません。
それを後続がどんどん拾っていき、やがて袋一杯に。
そしてまた、その後続が拾うを繰り返していくような感じです。
2~3時間おきにラジオの生放送番組から、予めスケジューリングされた参加者の携帯に電話がかかってきてインタビューされます。
はじめのうちは、事前に静かな場所で待ち構えていて、緊張しながら真面目に応えていました。
この頃はまだ皆の表情も楽しそうです。
約10キロごとに湖岸の公園でスタッフが待機していて、スポーツドリンクやチョコレート、おにぎりやサンドイッチなどを配ります。
もちろん看護師も待機していて、血中酸素濃などの健康状態をチェック。
その時用いられた体脂肪計で、その日僕は体脂肪率4%を記録しました。スゴすぎない?
でも後で判ったことですが、その後水分を摂るとすぐに15%くらいにまで増加しました。
その器械は、体内の電解質(水分)に流れる電流量で、脂肪の量を予想しているだけのようでした。
こんな測定器じゃ、汗をかいただけで体脂肪が減ったと誤解してしまいますよね。水分摂取の必要量の目安にはなりましたけど。
そんな休憩所には、多くの仲間が手伝いに来てくれていたのですが、皆そこそこの成功者たち。
ベンツやポルシェが公園に並び、バーベキューなどされている一般の家族連れなどには異様な集団に見えるでしょう。
しかもボスは自家用ヘリを呼んで、空撮までさせていましたから、余計に何者?集団です。
そこに到着する参加者は皆、サンタクロースのように、ゴミ袋をかついでやって来るのですから注目の的です。
ラジオの効果もあって、声をかけて応援して下さる方々もいらっしゃいました。
午後になると、歩く列は徐々に崩れ始め、2~3人ずつで歩くようになりました。
リレー参加している方々は、20~30キロくらいで終了されて、次の参加者に交代されますが、僕は明日も明後日も・・・
段々と、おしゃべりするのも辛くなって来て、やがて一人歩きになります。
この後、膝の裏側からふくらはぎが痛くなって、最後は太ももまで痛くなり、ついには一度動きを止めると、足を上げることもできなくなるのを知っています。
休憩地点で、エアコンのガンガン効いた車で仮眠したり、整体師にマッサージしてもらったり。
さすがにボスも歩くスピードが落ちると、目標時間通りにホテルに着けなくなることが予想できたようです。
はっきり言って、すべてを可能にする(可能と考える)ボスでも、50キロ(彦根市辺り)くらいで、リタイヤしたくなったはずです。
でもそう言わない意地がある人です。一日目にして、僕の100キロマラソンの大変さが理解できたのでしょうが、今回は自分一人の挑戦ではないので、皆のことを気にかけつつ、ラジオ番組のインタビューにも対応するボスは偉い(えらくしんどそう)。
・・・実は告白すると、僕は途中でズルしました。
妻が車で応援に来てたんですが、3日間のうち何回か次のチェックポイントまで車で送ってもらってたんです。「ごめんなさい!」
だって一周に挑戦している参加者数人は、途中でやめることは許されず、3日間参加しないといけないんですもの!
そうでもしないと絶対に体力が持ちません。大勢が歩いているし、数人がズルしても体裁は保てるって言うか・・・。
3日間トータルで150キロくらいを目標に、力を抜かせてもらいます!(威張るな!!)
その晩、湖東地区の米原市にあるリゾートホテル『エクシブ琵琶湖』のスイートルームで、1日目の打ち上げが行われる予定でしたが、30人くらい集まったものの、この日歩いた参加者は、床に足を投げ出して座ったまま誰も動けません。
一旦気持ちが途切れると、皆グダグダになりました。
スタッフに湿布や磁器治療器でケアしてもらっても、何も効果が感じられないような気分で、大量のビールが余りました。(僕は最初からそう言ったのに)
しかし、その様子をラジオの番組で伝えるのは、僕の出番です。
その間は声だけワイワイガヤガヤしてもらって、一応盛り上がってるようにレポートしましたが、皆失笑していました。
翌日、2日目の朝、スタート地点のホテルの駐車場に行くと、十数名の飛び入り参加者が集まって来ていました。
昨日のラジオで「飛び入り歓迎」とか言ってたらしく、それを聞いた地元の有志がグループで駆け付けたのだそうです。
僕らは想定外。ありがたい話ですが、そんなに気楽に参加するものではないですよ。
だって事前の健康診断も受けてもらってないし、途中で棄権されても各人が駐車してるこのホテルまで戻る手段もないし、今夜の宿泊先まで辿り着いても部屋の予約してないでしょう。
最後はスタッフが、送って帰ることになります。
今日から参加された皆さんはニコニコ楽しそうに歩いて行かれますが、僕は最初の一歩が出ないくらいに、足がカチカチに固まった状態でした。
それでもまた一日、歩き通しの覚悟です。気合を入れて奮起します。
でもこの日からゴミ拾いは諦めて、空き缶とペットボトルだけを拾う事にしました。草むらまでかき分けると、はっきり言って手が回らないくらいゴミが落ちてるんですよね。
昨夜の宴?で、「タイトルも『空缶ウォーク』だし、それでいいか」って話し合ったんで、ご勘弁ください。
それでもすぐにゴミ袋はサンタクロースになります。活きのいい先頭集団が頑張ってくれるんですけど、結構取りこぼしもあって、後ろの方を歩く僕も袋が邪魔になるくらいです。
作品名:ビワイチ(続・おしゃべりさんのひとり言 109) 作家名:亨利(ヘンリー)