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端数報告7

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そして今度は後ろにいるやつじゃない。真ん中のトカゲ男の仕業に違いないけれど、これを検算する者がいると思いもしてないんだろう。おれのような人間にブログに書かれてこっそり読まれ広がるなんて……そりゃあまさかだろうな。おそらくほんとは前年同様3%くらいに減ってて、一万三千検査しても四百人くらいしか陽性の者はいなかったんじゃねえか。
 
しかし《バレるわけがない》という考えで「4515、5773」と嘘をつく。やはりトカゲの親玉である長谷川と市川が、コロナを実際の状況でなくテレビが言う感染者数で〈スカイネット〉になる時を決めると考えて疑わず、自分達が〈主役〉となるためやったことに違いないのだ。
 
画像:長谷川と市川 アフェリエイト:シン・ゴジラ
 
初めにこうして勇み足に、
「これは人類滅亡の危機なのですね」
「はい。その通りです」
とやったために、何がなんでも格好つけて終わらせなければならないことになってしまった……が、これも不発に終わる。もちろん不発に終わるに決まっているんだが、新聞に正しいデータを載せることはまったくできない。
 
画像:中沢健ネッシーの正体
 
その怪獣の正体がこの人物が唱えるこのようなものであり、脚はあるけど上陸の可能性など決してないものだった、なんてことにするわけにいかない。それでごまかしをやったというのがここで見せた新聞の記事で、いちばん右のに〈22.6〉とか〈23.3〉とあるね。有り得ない。それは45くらいでないと計算が合わないのだから。
 
それ以前の1年間は、これに掲載されたデータの検査数を700で割って陽性率を掛けた数字がニュースでその頃に言っていた新規感染確認数の週平均とズレたことはないのである。と言ってもおれは細かく調べてないが、わざわざ調べてみるまでもなく大体一致することがひとめでわかる数字が記載されてきていたのだ。
 
わかりますね。なのにこの夏の数字はこうだ。おれが思うにこの〈波〉がすぐに終わったのは、街で実際に市民を検査していた者らの間で、
 
「おかしいな。ウチが報告している数は7月のまま変わらない……むしろ減ってるくらいなのに、なんでニュースじゃあんな爆発的拡大になるんだ」
 
と考える人間がいて、別の検査区域の者に「お宅ではどうですか」と訊いたら、
 
「いや、ウチもそうなんだよね」
 
という話になったりして、それが長谷川博己の耳に届いて、
 
「まずい」
 
と言うことになった。マスコミは嘘を鵜呑みにして報道しても、実際に人を検査している者には嘘を気づかれてしまう……というようなことでもあったのではないかと考えているのだけれど、どうなんだろう。これについては、おれとしても想像の域を出んことである。
 
作品名:端数報告7 作家名:島田信之