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家庭それぞれ

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その7


犬と共に暮らした数年でしたが、私の不始末でうっかり鎖を外していたのを忘れ木戸を開けた隙に犬は庭の外へ出て行きました。いままでもそういうことはたまにあって日暮れには帰っていたのですが、その日はとうとう帰りませんでした。
耳も聞こえにくくなっていたし、餌をやっても鼻で器を探して食べていたので目も見えにくくなっていたようでした。日が暮れて自宅に帰ろうとしても道がわからなくなったのではないかと思います。保健所にも市役所の犬狩りの係にも届けましたが連絡は来ませんでした。その頃の衰えは死期が近づいているように思えたので、死んだらどうしようと考えていた所でした。犬はそれを察知してか、迷惑のかからないような死に方をしたのだと思います。

フェイスブックに過去の写真が出てきて犬が元気だったころの写真もあります。その姿を見ると胸が傷みます。一番淋しかったとき傍に居てくれた愛犬でした。私が神戸から帰ると寝室の外に居て守ってくれていました。亡くなった家族を思い出しても涙は出ませんが、犬のことを思いだすとその度に涙が出ます。

作品名:家庭それぞれ 作家名:笹峰霧子