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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紫に暮れる空 探偵奇談25 後編

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「じゃあ…血まみれの姿で部屋に佇んでいるのも…耳元で囁いてるのも…美捺じゃないの?」
「違う」
「あたしの手が血まみれなのも、夜中に首を絞められるのも、毎晩部屋のドアを叩かれるのも?」
「美捺さんじゃないよ。大けがをしている岡崎の心が、作り出しているんだ」

そうだったのか…。

「美捺じゃないの…」
「罪の意識が見せているんだ。誰のきみを裁けないから、君自身の心が、君自身を罰している」

紫暮が言った。

「きみのしたことは生涯背負っていくもので、誰も代われないし誰も助けてやれない」

その通りだ。誰にも助けてはもらえない。

「でも俺は、」

座っている恵麻の前に屈みこんで、紫暮が静かに言葉を紡ぐ。

「大いに後悔して、心を壊して、ここまで深く自己を見つめ直そうとする者に限っては、やり直す機会を与えてあげるべきだと思うんだ」
「………」
「だから、自身を否定するのはだめだ。死ねばいいなんて言ってはいけない。生きていれば、償える方法はいくらでもあると思う。すべてを諦めて生きるのと、償うために苦しみながら生きることは全く異なる」

恵麻は両手で顔を覆った。

「あ…あたし、諦めたくない…苦しくてもいい、生きて、ちゃんと…」
「うん…」
「…一生かけて、償う。苦しくても、後ろ指さされて同じことされても。絶対に、逃げたくない…」

自身を諦めてしまえば楽なのだろう。しかし、それをしたら、それこそ美捺はどうなるのだ。美捺のぶんも、恵麻は苦しまなくてはいけないのだ。生きて、苦しむ。

「卑怯でずるくて、幼稚でばかだったあんな自分に…人の気持ちを踏みにじって平気でいたあのとき自分に、絶対負けたくないの…!」

そうだね、と紫暮が優しく肯定してくれる。

「負けるな」



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