青と黄色とサラバンドじいさん
さらに数日後、事件は予想外の展開を迎えた。あのとき「サラバンドじいさん」を襲った犯人が一人の男子大学生に横方向から薬品をかけたところ、別の通行人に通報され、そのまま逮捕されたのだ。何と彼は、現在進行形で内戦下にある国の出身者だったのだ。そしてその動機は、誰もが耳を疑うものだった。
「東欧ノ国バカリ応援シテ、私ノ国ヲ応援シテクレナイ。気ニ入ラナイ」
「青色ト黄色ノ物ヲ身ニ着ケテル人、気ニ入ラナイ」
この話は即座にマスコミやSNSに拡散され、多方面の著名人がコメントを出した。その大多数が、東欧の国への嫉妬に駆られた加害者を非難するものだった。私も犯人の動機をテレビ経由で知って、あることを思い出し、背中がうすら寒くなった。
「サラバンドじいさん」は加害者に襲われた日、青色と黄色のシリコン製のリストバンドを着用していたのだ。
私は部屋で一人、絞り出すようにつぶやいた。
「そんな理由で、人を苦しめるの…?」
※この物語はフィクションです。登場人物は全て架空の存在であり、実在のものとは一切関係ありません。……多分。
作品名:青と黄色とサラバンドじいさん 作家名:藍城 舞美