『息子の部屋』をみた
「いや、猫はいつもと変わりないよ。それより大変なのは、医者がショックでノイローゼになるんだ。そうなると、患者さんの診察もできなくなる」
「そういうもんかな」
「そうさ、だって、医者が病気になったら一番やっかいだって、昔からいうだろ」
「・・・・」
「もう明日から診療できなくなりますって、一人ずつ患者に言うんだよ」
「ホウ」
「患者さんによっては、先生も大変ですから、その気持ちわかりますよ、なんて同情してくれる人もいるんだけど」
「そういう人ばかりではないだろう」
「そうなんだ。今まで俺をだましていい加減なこと言って、今度は「はいサヨナラか」今までの俺の人生返してくれなんて言って、医者をぶん殴るやつだっているんだ」
「そこまでするかネエ」
「そうだよ。患者さんは普通と違うから、何するかわからないんだよ」
「・・・・・」
「終いには診療所を閉めてしまうんだ」
「・・・・」
(中略)
「お前のとこなんかまだいいほうなんだぞ。息子が大学いかないとか医者になれないなんて嘆くけどね、元気で生きてるんだろ」
「ま、そうだけど」
作品名:『息子の部屋』をみた 作家名:ヤブ田玄白