【プロローグ】OVER HEAR -オーバ―ヒア-
OVER HEAR -オーバ―ヒア-
白井ユウ :高校2年生の女の子
立花アイ :高校2年生の女の子。
謎の女性 :研究のこと以外にはあまり関心はないけれど、困ってる人に対する共感力が強い。
ラヒ(Rahe) :謎の女性が作成した補聴器。Siriやアレクサのような機能も備わっている。
ユウの父 :娘のことは大事だけど上手く距離感を掴むのが苦手。
医者 :ユウのかかりつけの病院の先生
第一幕【プロローグ】
ユウ「それは、突発的にやってきた」
<ユウの部屋>
ユウ「えーっとぉ?・・・。」
ユウ「(耳に痛みが走った時の声)・・・(それに対して不思議がる声)」
スマホが鳴る
アイ「ごめん、今いい?」
ユウ「うん、どうしたの?」
アイ「英語の翻訳、やってある…?」
ユウ「もう次のとこいってる」
アイ「お願い!見して!」
ユウ「ちょっとはやった?」
アイ「…ひ、左のページはやった!」
ユウ「じゃあ一緒に確認しよ」
アイ「…」
ユウ「やってないでしょ」
アイ「1段落目は難しかったから」
ユウ「じゃあ訳したとこだけでも確認しようよ」
アイ「…」
ユウ「まさか一文字も」
アイ「すいません…」
ユウ「明日カフェオレ奢りね」
アイ「えー…」
ユウ「切りまーす」
アイ「あぁぁあ待って待って、奢る、奢ります!」
ユウ「ったく」
効果音:パシャ、シュコンッ
アイ「ありがと!さーてやりますかぁ」
ユウ「丸写しじゃん」
アイ「それは言ったらダメよ、私だってユウみたいに集中力あったらこんな翻訳すぐに」
ユウ「書こっか」
アイ「はい」
効果音:電話越しの筆記音
アイ「ねえ」
ユウ「ん?」
アイ「どうやったらそんな集中できるの?」
ユウ「ラジオとか聴きながらやってるからかな」
アイ「そっちの方が集中しづらくない?」
ユウ「私は何か音が流れてる方が良いんだよね。なんか、無音って寂しくない?」
アイ「うちはいっつもうるさいから無音な状況になってみたいよ」
ユウ「そっちの方が憧れるかも」
アイ「絶対うそそれは」
ユウ「いやほんとに。誰かが居るから音がする、というか。音がしてると寂しさが薄まって、な
んか良いメンタルで宿題できるから、みたいな」
アイ「ふーーん」
ユウ「ところでさっきからペンの音が聞こえてきませんが」
アイ「あ、はい、書きまーす」
アイ「いやー終わった終わった、ありがとね」
ユウ「今回だけだからね。じゃ、おやすみ〜」
アイ「おやすみ〜」
ユウ「それは、突発的にやってきて、奪っていった。」
ユウ「・・・あれ、目覚まし掛けたっけ。 音量下げて・・・ない。スピーカー壊れた?
勘弁してよ買ってもらったばっかなのに・・・。」
ユウ「おとうさーん、・・・・え」
ユウ「え・・・声が・・・何これ・・・お父さん・・・なんて言ってるの?
全然聞こえないんだけど・・・。 え? え? 」
<病院>
医者「診断の結果、娘さんは重度の難聴である可能性が高いことがわかりました」
父 「それは、ちゃんと治るんですか?」
医者「回復はするかもしれませんが、どこまで良くなるかは定かではありません。」
父 「どんな方法でも良いので、娘の耳が聞こえるようになりませんか」
医者「ここまでの難聴がある場合、補聴器が適応となりますが、ここから回復するか判断できないため、1週間ほど様子を見させていただきたいです。 1週間後、それでも耳の聞こえが悪いようでしたら、補聴器を検討させていただきます。」
父 「・・・わかりました、ありがとうございました。」
医者「お大事に。」
<ユウの部屋>
ユウ、お気に入りのラジオでチューナーをいじりラジオを聞こうとするが、全然耳に入ってこない
「何これ…全然聞こえないじゃん…。 チューナー合ってるかもわかんないし…。
音が・・・聴こえない・・・」
<街中>
ユウ「・・・勉強もちゃんとやってたのに。誰にも迷惑かけてないのに。私なにも悪いことしてないの
に・・・。
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい・・・・。」
ユウ「もうやだ・・・。 死にたい。 死にたい。」その場でうずくまる
ユウ「・・・誰」
謎の女性「よく頑張ったね。 ほら、こっち着けてみて」
ゴソゴソ音から急に無音
謎の女性「さて、上手くいくかな。(咳払い)『Rahe(ラヒ), Over Hear』 」
起動音
謎の女性「適合、調整。」
環境音のノイズがチューナー合わせるように段々とクリアな環境音へと変わっていく
ユウ「え・・・・」
謎の女性「どうだい?こっちのが良いだろ」
ユウ「音が・・・」
謎の女性「君は聞こえが悪くなってからどれくらい経つ?」
ユウ「…い、1週間」
謎の女性「そっか、辛かったね。」
ユウ「…」
謎の女性「どうだい? 聞こえてた時と変わりないかい?」
ユウ「は、はい」
謎の女性「そりゃよかった」(立ち上がり、その場を去ろうとする)
ヒールのカツカツという音が遠のいていく
ユウ「あ、あの、これって…」
謎の女性「それ? 君にあげる」
ユウ「いやでも、こんな高価なもの、それに使い方だって」
謎の女性「(去り際に話す)困ったら、そいつに聞いてみな。 (振り返り)合言葉は『Rahe, Over Hear』だ」
人々の歩く音、徐々にフェードアウト
<ユウの自宅>
ユウ「ただいま」
父「おかえり。」
スリッパの音近づく
父「今日の、診察、どうだった?」
ユウ「え、あ、うん・・・補聴器もらった」
父「そうか…聞こえにくかったら、すぐに」
ユウ「そんなカタコトに喋らなくても、聞き取れるよ?」
父「…え?」
ユウ「今は前とおんなじ感じだから、大丈夫」
父「最近の病院はそんな良い補聴器を貸してくれるんだな…」
ユウ「いや、この補聴器は…知らない人から…」
父「大丈夫なのかそれ!?」
ユウ「う、うん。 今のところは。」
父「・・・何かあったら、すぐ言うんだぞ?」
ユウ「うん、ありがとう。」
ユウ「ラジオ…」
ユウ「聴こえる…聴こえる…」
しばらく佇む
ユウ「そういえば、合言葉って」
ユウ「ラヒ、オーバーヒア」 →起動音(ラヒの音1)
ラヒ「ご用件は何でしょう?」
ユウ「ご用件?…えーーっと、ラヒの」 →閉じる音(ラヒの音5)
ユウ「ぁあぁぁ」
ユウ「ラヒ、オーバーヒア」 →起動音(ラヒの音1)
ラヒ「ご用件はなんでしょう?」
ユウ「ラビはどんなことができるの?」
ラヒ「スマートフォンと連動した機能が使えます」
ユウ「え・・・。ほ、他に機能は無いの?」 →反応音(ラヒの音2)
ラヒ「対象者の声を登録することで、雑音の中からでもその声を抽出し、増幅させることが可能です。」
ユウ「(ヘ〜、面白そう) どうやってするの?」 →反応音(ラヒの音2)
白井ユウ :高校2年生の女の子
立花アイ :高校2年生の女の子。
謎の女性 :研究のこと以外にはあまり関心はないけれど、困ってる人に対する共感力が強い。
ラヒ(Rahe) :謎の女性が作成した補聴器。Siriやアレクサのような機能も備わっている。
ユウの父 :娘のことは大事だけど上手く距離感を掴むのが苦手。
医者 :ユウのかかりつけの病院の先生
第一幕【プロローグ】
ユウ「それは、突発的にやってきた」
<ユウの部屋>
ユウ「えーっとぉ?・・・。」
ユウ「(耳に痛みが走った時の声)・・・(それに対して不思議がる声)」
スマホが鳴る
アイ「ごめん、今いい?」
ユウ「うん、どうしたの?」
アイ「英語の翻訳、やってある…?」
ユウ「もう次のとこいってる」
アイ「お願い!見して!」
ユウ「ちょっとはやった?」
アイ「…ひ、左のページはやった!」
ユウ「じゃあ一緒に確認しよ」
アイ「…」
ユウ「やってないでしょ」
アイ「1段落目は難しかったから」
ユウ「じゃあ訳したとこだけでも確認しようよ」
アイ「…」
ユウ「まさか一文字も」
アイ「すいません…」
ユウ「明日カフェオレ奢りね」
アイ「えー…」
ユウ「切りまーす」
アイ「あぁぁあ待って待って、奢る、奢ります!」
ユウ「ったく」
効果音:パシャ、シュコンッ
アイ「ありがと!さーてやりますかぁ」
ユウ「丸写しじゃん」
アイ「それは言ったらダメよ、私だってユウみたいに集中力あったらこんな翻訳すぐに」
ユウ「書こっか」
アイ「はい」
効果音:電話越しの筆記音
アイ「ねえ」
ユウ「ん?」
アイ「どうやったらそんな集中できるの?」
ユウ「ラジオとか聴きながらやってるからかな」
アイ「そっちの方が集中しづらくない?」
ユウ「私は何か音が流れてる方が良いんだよね。なんか、無音って寂しくない?」
アイ「うちはいっつもうるさいから無音な状況になってみたいよ」
ユウ「そっちの方が憧れるかも」
アイ「絶対うそそれは」
ユウ「いやほんとに。誰かが居るから音がする、というか。音がしてると寂しさが薄まって、な
んか良いメンタルで宿題できるから、みたいな」
アイ「ふーーん」
ユウ「ところでさっきからペンの音が聞こえてきませんが」
アイ「あ、はい、書きまーす」
アイ「いやー終わった終わった、ありがとね」
ユウ「今回だけだからね。じゃ、おやすみ〜」
アイ「おやすみ〜」
ユウ「それは、突発的にやってきて、奪っていった。」
ユウ「・・・あれ、目覚まし掛けたっけ。 音量下げて・・・ない。スピーカー壊れた?
勘弁してよ買ってもらったばっかなのに・・・。」
ユウ「おとうさーん、・・・・え」
ユウ「え・・・声が・・・何これ・・・お父さん・・・なんて言ってるの?
全然聞こえないんだけど・・・。 え? え? 」
<病院>
医者「診断の結果、娘さんは重度の難聴である可能性が高いことがわかりました」
父 「それは、ちゃんと治るんですか?」
医者「回復はするかもしれませんが、どこまで良くなるかは定かではありません。」
父 「どんな方法でも良いので、娘の耳が聞こえるようになりませんか」
医者「ここまでの難聴がある場合、補聴器が適応となりますが、ここから回復するか判断できないため、1週間ほど様子を見させていただきたいです。 1週間後、それでも耳の聞こえが悪いようでしたら、補聴器を検討させていただきます。」
父 「・・・わかりました、ありがとうございました。」
医者「お大事に。」
<ユウの部屋>
ユウ、お気に入りのラジオでチューナーをいじりラジオを聞こうとするが、全然耳に入ってこない
「何これ…全然聞こえないじゃん…。 チューナー合ってるかもわかんないし…。
音が・・・聴こえない・・・」
<街中>
ユウ「・・・勉強もちゃんとやってたのに。誰にも迷惑かけてないのに。私なにも悪いことしてないの
に・・・。
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい・・・・。」
ユウ「もうやだ・・・。 死にたい。 死にたい。」その場でうずくまる
ユウ「・・・誰」
謎の女性「よく頑張ったね。 ほら、こっち着けてみて」
ゴソゴソ音から急に無音
謎の女性「さて、上手くいくかな。(咳払い)『Rahe(ラヒ), Over Hear』 」
起動音
謎の女性「適合、調整。」
環境音のノイズがチューナー合わせるように段々とクリアな環境音へと変わっていく
ユウ「え・・・・」
謎の女性「どうだい?こっちのが良いだろ」
ユウ「音が・・・」
謎の女性「君は聞こえが悪くなってからどれくらい経つ?」
ユウ「…い、1週間」
謎の女性「そっか、辛かったね。」
ユウ「…」
謎の女性「どうだい? 聞こえてた時と変わりないかい?」
ユウ「は、はい」
謎の女性「そりゃよかった」(立ち上がり、その場を去ろうとする)
ヒールのカツカツという音が遠のいていく
ユウ「あ、あの、これって…」
謎の女性「それ? 君にあげる」
ユウ「いやでも、こんな高価なもの、それに使い方だって」
謎の女性「(去り際に話す)困ったら、そいつに聞いてみな。 (振り返り)合言葉は『Rahe, Over Hear』だ」
人々の歩く音、徐々にフェードアウト
<ユウの自宅>
ユウ「ただいま」
父「おかえり。」
スリッパの音近づく
父「今日の、診察、どうだった?」
ユウ「え、あ、うん・・・補聴器もらった」
父「そうか…聞こえにくかったら、すぐに」
ユウ「そんなカタコトに喋らなくても、聞き取れるよ?」
父「…え?」
ユウ「今は前とおんなじ感じだから、大丈夫」
父「最近の病院はそんな良い補聴器を貸してくれるんだな…」
ユウ「いや、この補聴器は…知らない人から…」
父「大丈夫なのかそれ!?」
ユウ「う、うん。 今のところは。」
父「・・・何かあったら、すぐ言うんだぞ?」
ユウ「うん、ありがとう。」
ユウ「ラジオ…」
ユウ「聴こえる…聴こえる…」
しばらく佇む
ユウ「そういえば、合言葉って」
ユウ「ラヒ、オーバーヒア」 →起動音(ラヒの音1)
ラヒ「ご用件は何でしょう?」
ユウ「ご用件?…えーーっと、ラヒの」 →閉じる音(ラヒの音5)
ユウ「ぁあぁぁ」
ユウ「ラヒ、オーバーヒア」 →起動音(ラヒの音1)
ラヒ「ご用件はなんでしょう?」
ユウ「ラビはどんなことができるの?」
ラヒ「スマートフォンと連動した機能が使えます」
ユウ「え・・・。ほ、他に機能は無いの?」 →反応音(ラヒの音2)
ラヒ「対象者の声を登録することで、雑音の中からでもその声を抽出し、増幅させることが可能です。」
ユウ「(ヘ〜、面白そう) どうやってするの?」 →反応音(ラヒの音2)
作品名:【プロローグ】OVER HEAR -オーバ―ヒア- 作家名:平塚 毅