最大の懸案事項 ~掌編集 今月のイラスト~
「もちろん!」
「真一さ~ん」
プールサイドで麗子が指でハートマークを作って見せてる、あの時ポチった青いビキニ姿でね。
僕はにっこり笑って親指を立てて見せたよ。
周りにいた人たちは『え? こいつ何やってんだ?』みたいな感じで引いてたけど、そんなの恋する二人には関係ないね、ただ普通の人には麗子が見えない、それだけのことさ。
麗子は満面に笑みを浮かべてこっちに走ってくる。
「プールサイドを走っちゃ危ないよ」
つい声に出しちゃったら、走ってた小学生たちに怪訝な目で見られたけど、それも気にならない、ま、もう死んでるんだから危ないも何もないんだけどね。
僕は麗子を受け止めようと腕を広げて待つ。
周りからはヒソヒソ声が聞こえてきたけど、そんなの勝手言わせておけばいい。
僕は『この時間が永遠に続いたらいいな』って思ったよ。
ただね、麗子は年を取らないけど僕はそうじゃない、それが目下のところ最大の懸案事項かな……。
作品名:最大の懸案事項 ~掌編集 今月のイラスト~ 作家名:ST