夏海、休日のアクシデント
【 夏海、休日のアクシデント 】
登場人物
夏海(22)
雄太(23) 夏海の彼氏
如月 祐樹 (34) 元タクシー運転手 クラブの馴染み客
弥生(36) クラブのママ
男性A(24) 弥生の店の従業員 金髪の髪型
男性B(24) 弥生の店の従業員 ピンクの髪型
警察官
刑事
看護師
医師
救急隊員
泥酔男
〇 高低差があり激しい起伏のある山岳地帯の道路
鉛色の空。
激しい雨で霞んで見える八甲田山連峰に似ているイメージの山々。
弧を描いた道路から、一台の黄色い軽自動車の屋根が見え次第に車体が見えてくる。
回転するタイヤが激しくアスファルトの雨水を掻き分ける。
フロントガラスを叩きつけるように降る激しい雨。
ワイパーが忙しく左右に作動している。
左右に弧を描くワイパーの隙間から見える男女二人の顔。
運転しているのは男性、雄太(23)
助手席にいるのは夏海(22)
アップダウン高低差のある道路。軽自動車がはずみでジャンプする。
〇 車内
軽自動車の弾みで夏海、雄太が深く座席シートに沈む、
雄太「いてぇ、間違って舌を噛むところだったよ、それにしても酷い天気」
夏海「仕方ないよ、台風が近づいているんだもの」
雄太「やっと二人で取れた休日なんだからせめてこの日だけでも晴れにして欲しかったな」
夏海「仕方ないよ」
雄太「夏海は仕方ない仕方ないばっかりだな。それじゃ進歩がないな」
夏海「じゃ、どうすんのさ雄太くん。解決策でもあるの」
雄太「ない!」
夏海「威張るんじゃない!」
夏海、拳骨を雄太の頭にこつんとやる振りをする。
雄太「いて!」
夏海「まだ殴ってないって、本当に殴るよ」
夏海、いたずらっぽく笑う。
〇 山岳地帯の道路
雨で霞む道。
一人の男性、如月 祐樹(34)が腹部を抑え、苦痛に顔を歪め、ふら付きながら道
路を横断しようとしている。
如月の顔には耳の下から顎にかけて顎鬚を蓄えているのが見える。
抑えた腹部からはワイシャツが血で染まり、抑えている手も血で真っ赤に染まってい
る。
〇 車内
夏海、ふと前方を見る。
ワイパーが雨を?き分けると前方に人影が
夏海「あ、危ない!」
急ブレーキを踏む雄太。
〇 山岳地帯の道路
急停止する前輪。
軽自動車は如月にぶつかる寸前で停まる。
運転席を睨んでいる如月。
如月、血で染まった手をバンパーに宛がう。
雄太、ドアを開け、降りてくる
雄太「死にたいのかよ、事故にでもなったらこっちは迷惑だかんな、バカヤロー」
雄太、バンパーに近づき、血で汚れた部分を見て
雄太「僕の大事な車、汚しちゃったじゃないか。アーア。(如月を見て)ちっ!」
〇 車内
雄太、入ってくる。
雄太、ハンドルを握る。
夏海「助けてあげて」
雄太、夏海の声に耳を貸さず、ギアをバックに入れる。
雄太、アクセルを踏む。
バックする軽自動車。
夏海「助けてあげてよ、雄太君」
夏海、雄太の腕を掴む。
雄太、アクセルを踏んで如月を避け加速する。
夏海「人でなし!もう、嫌い!」
雄太、急ブレーキを掛ける。
バックミラーには如月が膝を折って座り込んでいる。
夏海「助けてあげて、血を流しているじゃない。救急車呼ぶだけよ。このままだとあの人死んじゃうよ。死んだら雄太のせいよ」
雄太「なんで僕のせいなんだよ。警察なんか呼んで巻き添えなんかになりたくはねえよ!まったく、せっかくの休みが台無しじゃん」
夏海「助けてあげて、お願い!」
雄太「しょうがねえな全く」
夏海が両手を合わせて懇願するジェスチャー。
〇 山岳地帯の道路
パトカーの前で事情徴収に応じる雄太と夏海。
夏海が警察官と雄太の間で傘を差している。
その脇をストレッチャーに如月を寝かせて救急車に運ぶ救急隊員。
夏海がストレッチャーの如月の顔に傘を差しだす。
警察官がストレッチャーの中の如月を見る。苦痛に顔を歪めている如月。
警察官、パトカーのドアを開け、雄太を車内に誘導する。
入り込む雄太。
救急車にストレッチャーを入れるのを見届ける夏海。
〇 パトカーの中 車内
夏海、中に入って来る。
雄太「だから何度同じこと言わせるんですか。僕は巻き添えになりたくないから放ってお
こうといったんです、こいつが、夏海が助けてあげてって言うもんだから仕方なく…」
警察官「仕方なく助けたと?…助けるのが普通では。(雄太の顔を伺う)ま、それはいいとして念のために住所と名前、それと連絡先伺ってもいいですか」
仏頂面の雄太。
夏海「私が書きます」
書いている夏海を見ながら
雄太「もう帰っていいですかね」
警察官、ちらっと顔をみる。
〇 ホテル 駐車場
雄太の軽自動車が駐車場に入る。
停車する軽自動車。
雄太、サイドブレーキを踏む。
夏海、腕時計を見て、
夏海「ぴったし、五時到着!」
雄太と夏海、傘を差して降りてくる。
夏海「あ、あれ!」
夏海、停車している車のほうを指さす。
傘を差している夏海、何かを発見したらしく、小走りに近づく。
雨に濡れる雄太、頭を手で多いながら、夏海の後を追う。
雄太「ちょっと待てよ!」
夏海、赤い車の前で、指さす。
夏海「私が欲しかった車、マーチミニスター」
雄太「買えばいいじゃん、今、中古なら安いよ」
夏海「この色、ラディアントレッドの車がなかったのよ」
雄太「なんだ、赤い車が好きなのか」
夏海「どんな人が乗っているのかな、今日このホテルに泊まっているのかしら。雄太くん興味ない?」
雄太「ないない。全くない。それより早く入ろうぜ。早く温泉入って暖まりてー」
〇 ホテル ロビー
風呂上がりの雄太と夏海、浴衣姿の二人は首にタオルを巻いてでてくる。
ロビー広間は観葉植物で仕切りをつくり、休息所を設けてある。
落ち着いた雰囲気の大きなソファが背中合わせに組み合わせて何カ所か設置してある。
その一角で談笑にふける男女三人の姿がある。
夏海、その賑やかな話し声の方向に目線を向ける。
夏海「あら?」
その一角には若い男性と年配の女性がいる。やはり男女とも浴衣姿。
若い男性はともにやせ型で一人は金髪、もう一人はピンク色に髪を染めている。
年配の女性、弥生(34)は和服な似合いそうな女性で男性二人に挟まれて真ん中に
座っている。
雄太が反対方面に行こうとしたときに、夏海は雄太の袖を引っ張り、「こっちこっち」
と言わんばかりに、弥生たちの方に引っ張っていく。
夏海、弥生達と反対側のソファに腰掛ける。
夏海「いいお風呂だったね」
雄太「温泉だからね。いいに決まってるじゃん」
弥生、夏海達の声に反応して少しチラ見する。が気にせず談笑に戻る。
夏海、人差し指を唇に宛がう。
夏海、聞き耳を立てる。
雄太「腹へったなぁ」
雄太、両手両足をのけぞらせている。
弥生「ちょっとやりすぎたんじゃない?」
登場人物
夏海(22)
雄太(23) 夏海の彼氏
如月 祐樹 (34) 元タクシー運転手 クラブの馴染み客
弥生(36) クラブのママ
男性A(24) 弥生の店の従業員 金髪の髪型
男性B(24) 弥生の店の従業員 ピンクの髪型
警察官
刑事
看護師
医師
救急隊員
泥酔男
〇 高低差があり激しい起伏のある山岳地帯の道路
鉛色の空。
激しい雨で霞んで見える八甲田山連峰に似ているイメージの山々。
弧を描いた道路から、一台の黄色い軽自動車の屋根が見え次第に車体が見えてくる。
回転するタイヤが激しくアスファルトの雨水を掻き分ける。
フロントガラスを叩きつけるように降る激しい雨。
ワイパーが忙しく左右に作動している。
左右に弧を描くワイパーの隙間から見える男女二人の顔。
運転しているのは男性、雄太(23)
助手席にいるのは夏海(22)
アップダウン高低差のある道路。軽自動車がはずみでジャンプする。
〇 車内
軽自動車の弾みで夏海、雄太が深く座席シートに沈む、
雄太「いてぇ、間違って舌を噛むところだったよ、それにしても酷い天気」
夏海「仕方ないよ、台風が近づいているんだもの」
雄太「やっと二人で取れた休日なんだからせめてこの日だけでも晴れにして欲しかったな」
夏海「仕方ないよ」
雄太「夏海は仕方ない仕方ないばっかりだな。それじゃ進歩がないな」
夏海「じゃ、どうすんのさ雄太くん。解決策でもあるの」
雄太「ない!」
夏海「威張るんじゃない!」
夏海、拳骨を雄太の頭にこつんとやる振りをする。
雄太「いて!」
夏海「まだ殴ってないって、本当に殴るよ」
夏海、いたずらっぽく笑う。
〇 山岳地帯の道路
雨で霞む道。
一人の男性、如月 祐樹(34)が腹部を抑え、苦痛に顔を歪め、ふら付きながら道
路を横断しようとしている。
如月の顔には耳の下から顎にかけて顎鬚を蓄えているのが見える。
抑えた腹部からはワイシャツが血で染まり、抑えている手も血で真っ赤に染まってい
る。
〇 車内
夏海、ふと前方を見る。
ワイパーが雨を?き分けると前方に人影が
夏海「あ、危ない!」
急ブレーキを踏む雄太。
〇 山岳地帯の道路
急停止する前輪。
軽自動車は如月にぶつかる寸前で停まる。
運転席を睨んでいる如月。
如月、血で染まった手をバンパーに宛がう。
雄太、ドアを開け、降りてくる
雄太「死にたいのかよ、事故にでもなったらこっちは迷惑だかんな、バカヤロー」
雄太、バンパーに近づき、血で汚れた部分を見て
雄太「僕の大事な車、汚しちゃったじゃないか。アーア。(如月を見て)ちっ!」
〇 車内
雄太、入ってくる。
雄太、ハンドルを握る。
夏海「助けてあげて」
雄太、夏海の声に耳を貸さず、ギアをバックに入れる。
雄太、アクセルを踏む。
バックする軽自動車。
夏海「助けてあげてよ、雄太君」
夏海、雄太の腕を掴む。
雄太、アクセルを踏んで如月を避け加速する。
夏海「人でなし!もう、嫌い!」
雄太、急ブレーキを掛ける。
バックミラーには如月が膝を折って座り込んでいる。
夏海「助けてあげて、血を流しているじゃない。救急車呼ぶだけよ。このままだとあの人死んじゃうよ。死んだら雄太のせいよ」
雄太「なんで僕のせいなんだよ。警察なんか呼んで巻き添えなんかになりたくはねえよ!まったく、せっかくの休みが台無しじゃん」
夏海「助けてあげて、お願い!」
雄太「しょうがねえな全く」
夏海が両手を合わせて懇願するジェスチャー。
〇 山岳地帯の道路
パトカーの前で事情徴収に応じる雄太と夏海。
夏海が警察官と雄太の間で傘を差している。
その脇をストレッチャーに如月を寝かせて救急車に運ぶ救急隊員。
夏海がストレッチャーの如月の顔に傘を差しだす。
警察官がストレッチャーの中の如月を見る。苦痛に顔を歪めている如月。
警察官、パトカーのドアを開け、雄太を車内に誘導する。
入り込む雄太。
救急車にストレッチャーを入れるのを見届ける夏海。
〇 パトカーの中 車内
夏海、中に入って来る。
雄太「だから何度同じこと言わせるんですか。僕は巻き添えになりたくないから放ってお
こうといったんです、こいつが、夏海が助けてあげてって言うもんだから仕方なく…」
警察官「仕方なく助けたと?…助けるのが普通では。(雄太の顔を伺う)ま、それはいいとして念のために住所と名前、それと連絡先伺ってもいいですか」
仏頂面の雄太。
夏海「私が書きます」
書いている夏海を見ながら
雄太「もう帰っていいですかね」
警察官、ちらっと顔をみる。
〇 ホテル 駐車場
雄太の軽自動車が駐車場に入る。
停車する軽自動車。
雄太、サイドブレーキを踏む。
夏海、腕時計を見て、
夏海「ぴったし、五時到着!」
雄太と夏海、傘を差して降りてくる。
夏海「あ、あれ!」
夏海、停車している車のほうを指さす。
傘を差している夏海、何かを発見したらしく、小走りに近づく。
雨に濡れる雄太、頭を手で多いながら、夏海の後を追う。
雄太「ちょっと待てよ!」
夏海、赤い車の前で、指さす。
夏海「私が欲しかった車、マーチミニスター」
雄太「買えばいいじゃん、今、中古なら安いよ」
夏海「この色、ラディアントレッドの車がなかったのよ」
雄太「なんだ、赤い車が好きなのか」
夏海「どんな人が乗っているのかな、今日このホテルに泊まっているのかしら。雄太くん興味ない?」
雄太「ないない。全くない。それより早く入ろうぜ。早く温泉入って暖まりてー」
〇 ホテル ロビー
風呂上がりの雄太と夏海、浴衣姿の二人は首にタオルを巻いてでてくる。
ロビー広間は観葉植物で仕切りをつくり、休息所を設けてある。
落ち着いた雰囲気の大きなソファが背中合わせに組み合わせて何カ所か設置してある。
その一角で談笑にふける男女三人の姿がある。
夏海、その賑やかな話し声の方向に目線を向ける。
夏海「あら?」
その一角には若い男性と年配の女性がいる。やはり男女とも浴衣姿。
若い男性はともにやせ型で一人は金髪、もう一人はピンク色に髪を染めている。
年配の女性、弥生(34)は和服な似合いそうな女性で男性二人に挟まれて真ん中に
座っている。
雄太が反対方面に行こうとしたときに、夏海は雄太の袖を引っ張り、「こっちこっち」
と言わんばかりに、弥生たちの方に引っ張っていく。
夏海、弥生達と反対側のソファに腰掛ける。
夏海「いいお風呂だったね」
雄太「温泉だからね。いいに決まってるじゃん」
弥生、夏海達の声に反応して少しチラ見する。が気にせず談笑に戻る。
夏海、人差し指を唇に宛がう。
夏海、聞き耳を立てる。
雄太「腹へったなぁ」
雄太、両手両足をのけぞらせている。
弥生「ちょっとやりすぎたんじゃない?」
作品名:夏海、休日のアクシデント 作家名:根岸 郁男