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大団円の意味

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 夢のような快楽を受けることができたその日は、前の時のように待合室で待つこともなかったので、そのまま、店を出て、食事に行った。身体には、まだまだひまりの余韻が残っていて、
「この快感、いつまで続くのだろう?」
 と思ったのだ。
 食事を済ませても、もう少し、街でいろいろ行こうと思っているところもあったのだが、身体の快感が残っている状態で、
「このまま、寝ると気持ちいいだろうな」
 と感じたことで、食事だけを済ませて、まっすぐに家に帰ってきた。
 そして、すぐに横になって眠ってしまったのだが、確かにその選択は間違っていなかったような気がする。
 夢の中に、ひまりが出てきたからだった。
 その夢の中で、ひまりは、遠山に従っていた。まるで何を言ってもいうことを聞く、言いなりの女の子であった。遠山はすぐに、
「これは夢なんだ」
 と感じた。
 その感覚から、
「相手に何を言っても、どうせ夢だから」
 という思いから、少々のきつめのプレイ、さらには、羞恥心を煽るようなプレイを推し進めた。
 彼女のMの部分を引き出したのである。それは逆に自分のS性を引き出させることになり、
「やっぱり、俺は多重人格なのだろうか?」
 という思いを改めて感じさせた。
 しかも、ひまりにも同じことを感じ、同時に、大学で見かけるあの女の子も、
「多重人格で、自分とは、SMの関係を気づくことができる相手なのではないか?」
 と感じた。
 そう思うことで、
「もしそうなら、彼女との出会いは運命であり、SMの関係を育む相手として、彼女も俺を待っているのかも知れない」
 という、傲慢とも思える妄想を抱いていたのだ。
 そして、次の日のことだった。大学に行くと、今までの二週間、一度も顔を合わさなかった彼女と、顔が合った。彼女の方は遠山の顔を見ると、明らかに動揺しているようだった。それを見て、遠山は今までにない自分の何かが目覚めたのか、声をかけたのだ。
 その時の感覚は決して思い切ってという雰囲気ではなく、まるで必然の行動であるかのように、
「ひまりさん」
 と声をかけた。
 彼女もそれを聞いて、背中に電流が走ったかのように、背筋が伸びて、怯えている様子を見せながら、目は、遠山をしっかりと見ている。
 遠山がニヤリと微笑むと、彼女はニコリと笑って、
「あなたを待っていたのよ」
 というではないか。
「どういうことだい?」
 と聞くと、
「あなたが、私の本性をいつ見抜いてくれるのかということを待っていたのよ。それで私も覚醒できると思ったの」
 という。
「覚醒とは?」
 と聞くと、
「それはあなたがこれから自分で見つけていくものなのよ。私はそれに協力する。お互いに覚醒していくことが、私たちの間での宿命なんだわ」
 と彼女がいうので、遠山も頷いた。
 二人はそれから、お互いの覚醒をそれ以後知ることになるのだが、遠山とひまりは、お互いにSMの関係がピタリと嵌っていた。ベッドの中では、ひまりは決して遠山に逆らうことをしない。まるで奴隷のごとくだ。自分でも、
「淫乱奴隷」
 などという言葉を口にしてはいるが、それはあくまでの自分を鼓舞しているかのようである。
 そう、このお話のこの章は、
「大団円」
 である。
「すべてがめでたく収まる結末についていう」
 というのが大団円というものであり、主人公と、準主人公に当たる人は、
「めでたく」
 と言ってもいいかも知れないが、丘の登場人物はどうであろうか?
 ただ、その後の他の登場人物について、敢えては語らないが。それぞれにめでたく終わったといっていいだろう。
 もちろん、そこには、
「遠山と別れたことによって」
 という経緯があるのだが、それでも、最後には皆、
「収まるところに収まった」
 という意味で、めでたくといっていだろう。
 それを思うと、作者がこの章だけではなく、今までの作品も、そうであったと思うようにしようと考えている。だから、きっと、これからも、ラストは、
「大団円」
 というのが、しばらくは続くものだと考えていた。

                 (  完  )



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作品名:大団円の意味 作家名:森本晃次