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藤沢藤秋
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そこに彼はいたか
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くちづけを、そのとうめいの、くうきの彼に残すと、わたしはドアを閉めた。
「……、」
「ああ―――、」
これだから、世界は、嫌いだ。
「お前、また」
ドアを閉めた、わたしと彼の空間のむこうがわ、とびらの向こうのこちらの世界にでるたび、
「あいつは、死んだんだぞ」
わたしは、となりにすんでいる彼の弟に、そんな事実をつきつけられるのだ。
―――ねえ、あなた、あなたはまだ、死んでなど、いないはずなのに。
作品名:
そこに彼はいたか
作家名:
藤沢藤秋