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はなのうえのものら

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問題はその後である。その後、どうやらそのスクールカースト上位組の、別なるお気に入りと呼ばれる奴——確か名を伊達と云ったか——が、何かお見合いならぬ形で、丸尾を仲良くし出したのである。それが、例えば丸尾と少しく似ている——前に私が見間違えた、彼と同じくして誰とも仲良く出来る角田と云う奴であれば良かったのだ。角田であれば変に私は嫉妬心を抱くこともなく、まああの性格同士であれば友達にさせてあげたい気持ちも分からなくもないなと得心することが出来たのだ。
その伊達という奴は、寧ろ私に似ておったのだ。どこか陰気な雰囲気を身に纏わせた、しかし私よりかは少しく太く、一回り程大きかったのが気に食わなかった。何より、彼は自身をオシャレなものであると信じ切っておったのが最も気に食わない点であった。
しかも性格まで何か私と似通った部分があったのだ。相手と話すとき少しく頭が垂れ下がってしまう所とか、すぐずり落ちてしまう所なぞ、私を少し太くした以外殆ど私と同等の存在であったのだ。
と、途端、私にはそれが、何か私とは実は——いや、誰とでも仲良くしている反面、何かしら友達に優位性を持たせているのではないかと訝しくも思った。私とは偶々前後の席にいたからに仲良くしただけに過ぎず、それが例えば坂口なり北条なり西村なり、誰でも良かったのだと思ったのだ。——男であるにも関わらず、我ながら気色悪い嫉妬をしてしまっているのは自覚していたが、しかし、所詮友情なぞ——殊、中学生の友情なんぞこの程度なのだと思った。
そして、落胆の渦中におった私は、何か彼奴等の——そのグループの間を通り抜けるようにして過ぎ去ろうとした時、私は窓から落とされたのであった。
どうやら、その人間たちの間では、眼鏡をかける人間を落とす、一寸虐めみた遊びが流行っていたそうな。私も、その餌食となってしまったのだ。
で、私を落としたのは、丸尾の主人であった。
丸尾の主人は、ちょいと我が主人をイジるつもりで私を触ると——少しく我が主人の鼻からずらすつもりであったのだろう、しかしそれが勢い余って横に弾き飛ばされる形となると、これまた何の偶然か窓が開いておったからに、その勢いのまま、私は窓外へと弾き飛ばされる顛末へと相成ってしまったのだ。
また、それを見ていた丸尾の方は、まさかまさか己が主人が左様なことを仕出かすとは思うもよらなんだし、明日は我が身とも思って戦慄いていたそうな。
「おおお‼ ごめん! 全くわざとじゃない! マジでごめん!」
と云って丸尾の主人は矢も楯もたまらず階下へと走り去ってゆき、私の主人は上からずっと私を視認し、見失わぬようにしておった。
そして丸尾の主人に拾われると、丸尾の方からも詫びがあった。
「ごめんごめん、主人がこんなことするなんて思わなかったよ…」
だが、私はまだ少しく、かのことが気がかりでもあったのだが——
「本当にごめんね、怒ってるよね」
と、私は何かそれに拗ねているかのように捉われたのであった。それが何かおかしかったのだ。私は失笑してしまったのだった。
「いや、怒ってないよ。割れなかったから良かったけど……次やったら絶交だからな」
「俺に言わないでくれよ! 主人に直接言ってくれ! それに、俺ももしかしたら…」
「はは、お前は何か割れそうだよな」
「だろお! 元々俺は縁が細い、軽いタイプだから——」
——そう笑い合い、私達はお互いの仲に疑問を抱かぬようになったのであった。——奇しくも、私の主人と丸尾の主人も親友同士になったそうな。

作品名:はなのうえのものら 作家名:茂野柿