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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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新年度を迎えた

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 診察室に行くと、新しく配属になった看護師さんがあいさつにくる。
看護師さんは、病院の中で数年に一度異動する。
慣れた仕事を続けてやってくれるほうがありがたいのだが、看護師長の命令で否応なしに動かされる。
同じ部署に長いこといると、いろいろ問題があるというのが主な理由らしい。
どんな問題なのか教えてもらったことはないが、きっとあまりいいことではないのだろう。

 一息ついたところで、皆を集めて新年度のあいさつをした。
三か月前のことを覚えている人がいるかどうか気になったが、私が覚えていないぐらいだから、誰も覚えていないだろうと腹を決めた。
今はやはり、コロナからの回復の兆しが見える時だ。このへんを話のきっかけにしようと思った。
〈新年度です。3年続いたコロナもようやく落ち着きを見せようとしています。でも、私たち医療従事者はまだまだ気を緩めることなく新たな気持ちで、これから一年をがんばっていきましょう〉というようなことをイントロダクションにしようと思った。

 新年度のあいさつはなるべく簡単にすませなければならないのだ。皆が三か月前のことを思い出さないうちに終わらせなければならない。
「新年のあいさつで申しあげたかもしれませんが、今年度も引き続いて、患者さんの身になって、診療を続けましょう。そして、少しでも病院の経営のお役にたてれば、なおいいです。無駄を省いて、一致協力しましょう」
という内容のことを、たどたどしく言った。

 新人を含めて皆、気乗りしない表情で聞いていた。
終わった後、とくに質問がなかったから、好評だったらしい。
今年度もスタートしたが、前年度と何か変わりがあるだろうか?
作品名:新年度を迎えた 作家名:ヤブ田玄白