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人生の織物

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その6


娘達がようやく落ち着いたのは、二人が東京の大学に入学してからだった。それまでの十数年は筆舌に尽くしがたい状況の中で必死で過ごしたので、私は風邪を引く間もなく寝込んだこともなかった。

私が奔走しているのを母は傍で何も言わず見守ってくれた。塾は仕方なく途中でやめていた。長女が勉強もせず遊んでばかりいた高校生のときは、私は入信していた法座に通い熱心にお経をあげていた。本来なら夫婦で対になって修行をするのが良いのだが、夫は断固として同行はしなかった。
それでも夫がいるだけで何かと心強く、私は夫に指示されたことを守って子供のことで懸命に動いていた。

学校があれほど嫌だった次女は思いがけなく有名大学に入学した。大学では熱心に勉強をし、大学院に進学してからは更に勉強に身を入れていたようだ。
夫はそのころはご機嫌で、父親という舵取りが必要だとしきりに自分の存在をアピールしていた。
二人の娘が一応落ち着いて独立し、やれやれという時期に夫が倒れた。

 
作品名:人生の織物 作家名:笹峰霧子