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手は口ほどにものを云い~掌編集・今月のイラスト~

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【1年でここまで手話を自在に操れるようになるには相当の努力が必要だったはずです】
【いえ……別にそれほどでも……】
【いえ、相手のことを思いやれてこそできることです、努力を努力とも思わない……あなたの幸恵に対する愛情はそれだけ深くて大きいということです】
 そこまで伝えると、幸恵に向き直った。
【余計な心配だったようだ、水を差すような真似をしてすまなかったね、でももう私は心配などしていない、お前の方こそ彼を大事にしなさい、お前は彼の支えなしには暮らしていけない、その分彼の支えにもならなくちゃいけないよ】
 そして再び僕に向き直った。
【娘を……幸恵をよろしくお願いします……】

▽   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽

「あら! 幸恵ちゃん、その指輪!」
 吉田さんの一言で経理部が色めきだった。
「綺麗なダイヤね! 送り主は部長なんでしょ?」
 幸恵には聞こえなかったはずだが、雰囲気で何を言われているのかくらいわかる。
 幸恵がうなずくと今度は騒ぎの矛先が僕に向いた。
「そうだよ、僕が贈った、まだ式の場所とか日取りとかは決めてないけど、その時は招待させてもらうよ」
 そう言うと経理部はさらに沸き立った。
 どこそこの式場が良いとか、何が食べたいとか、そんなのは余計なお世話だと思ったけどね、幸恵の白いドレス姿が見たい、と言うのには全く同感だな。
 恥ずかしそうに立ちすくんでいる幸恵……僕は想像の中で彼女にウェディングドレスを着せてニンマリとほほ笑んだ……。