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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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あれから12年―2

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 私は、ほとんど諦めたが、裏道にあるパン屋さんに行った。
おそるおそる
「パン、ありますか?」と聞くと、おばさんが出てきて、
「あるよ」と言う。
棚に最後の食パンが二斤あった。
〈よかった〉
「パン、四切れ売ってもらえますか?」というと、おばさんは、店の奥にいるおじさんと相談した。
「そうね、半斤だったらいいよ。切ってあげるから。何枚に切ります?」
「ありがとう。じゃ、四枚に切って」と頼んだ。
「バターありますか?」と聞くと、
「そうね、業務用ならあるんだけど。塗ってあげようか? でも今食べるんじゃないでしょ?」
「ありがとう、それじゃ、二枚だけ塗って下さい。」と頼んだ。

 それで翌日まで生きのびた感じだった。
それにしても、あのおばさん、親切な人だった。

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 あの頃、食べ物にありつくのは大変だったのだ。
今は毎日、何か食べられる。ぜいたくは言えない。
作品名:あれから12年―2 作家名:ヤブ田玄白