小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

赤い包み紙 ~掌編集・今月のイラスト~

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

 ブティック勤務ってことで土日はもちろん出勤、そのせいで途切れちゃった交際なんかもあったんだけど、今回は彼女もフリーランスってことでなんの支障もなく僕たちの交際は順調に続いた、夏休みを海辺のホテルで過ごして、もうその頃には僕の心は大方決まってた、そしてたぶん彼女も……。
 
▽   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽   ▽

 彼女を部屋まで送り届けて自分の部屋に戻った僕は、もらった赤い包みを取り出した。
 リボンが少し乱れてるのはご愛敬、彼女、絵は得意だけどあまり器用なクチじゃないから。
 むしろそれは中身が手作りだってことを示してるようなものだろう?
 でも……。
 包み紙に透かしみたいに型押しされた店名を見て「おや?」って思った。
 それは随分と高級な洋菓子店の名前だったんだ、たぶんそこのチョコならゴデ〇バよりも値が張るはず……仕事柄そう言ったことには詳しいんだ、自分で買うことはないけどさ……。
(もしかして手作りじゃないのかな……リボンも僕が持ち帰るときに乱れただけなのかも)
 もうね、プロポーズしたら必ず『Yes』って言ってくれるだろうって思ってたから、チョコも手作りを期待してたんだよね、僕にとってはゴデ〇バなんかよりその方がよっぽど嬉しいから。
 で、ちょっとドキドキしながら箱を開けてみた。
 つややかで形の良いチョコが並んでたよ……ちょっとばかり不器用な彼女の手作りには見えなかった……。
 そういえば……。
 夏休みを一緒に過ごして以来、僕が休みの月曜と火曜日はほとんどと言って良いくらいデートしてたんだけど、この二か月くらいは火曜日だけはと腕には応じてくれなくなって、ランチが済んだくらいのタイミングで帰っちゃうようになってたんだ。
(結婚まで考えてるのは僕だけで彼女はそこまでじゃないのかなぁ……プロポーズは早すぎるかも……)
 僕はちょっと落胆しながらチョコを一粒摘み上げて口に放り込んだ。
「え? 何、これ……」
 なんとそのチョコはしょっぱかったんだ。
 何かのフレーバーがついてるとかのレベルじゃない、どう考えてもこれは塩味……。
 と、箱の底に彼女からのメッセージカードを見つけた。
『お菓子教室に通って一生懸命に作ったんだけど、気に入ってもらえたかしら……これからもよろしくお願いします』
「ははは、そういうことだったのか……」
 どうやら火曜日はそのお菓子教室だったらしい、粒ぞろいでつややかなチョコは特訓の成果だったっわけだ。
 でも、砂糖と塩を間違えて入れちゃったみたい……彼女はちょっと天然が入っていてそんなところも可愛いって思ってた、だから僕はしょっぱいチョコを全部食べたよ、一粒ごとに苦しょっぱいチョコに顔をしかめながら三日かかったけどね。
 で、一月後のプロポーズは決定。
 チョコ一つにこれだけ身を入れてくれるんだから迷いはなしさ。
 二人での新生活が始まったら、きっと腕によりをかけて料理してくれるんじゃないかな……味の方はわからないけどね。