面接試験で人間がわかるだろうか?
面接は夕方終わったが、強い疲労感の中で思ったことがある。
〈はたして、面接試験で、その人間が判断できるものだろうか? たかが十分ぐらい見ただけで、どんな人間かわかるものだろうか?〉
何十年一緒にいても、ほんとうはどんな人間かわからない、と同僚のSなどはよく言っている。
受験生からすれば、十分間だけ別の人間のように振舞えばそれですむことだ。
何十年も別人のように振舞い続けることに比べたら、十分などものの数ではない。
もう一つの問題は、面接官の大部分が男の医者という点だ。
男子学生には厳しく、女子には甘いのではないかという懸念がある。特に私にはその懸念がある。
大切な日曜日を使って、私が選んだ医学生なのだから、全員、医師国家試験に合格してもらいたいと思った。
しかし、本当は、国家試験に合格してから先が大事だろう。
合格した医者にも悪い医者はいる。
医者になってから悪くなったのか、もともと悪い人間が医者になったのかは分からないが、少なくとも私の責任ではない。
入試の面接に警察官や国税庁の職員に手伝ってもらえれば、もっといい医者が増えると思うが、実行は難しいだろうか。
あの時、そんな感想をもったが、今もその思いは変わらない。
作品名:面接試験で人間がわかるだろうか? 作家名:ヤブ田玄白