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山の妄想詩

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私は降り落ちる葉を首をすくめて眺めていた
今日出会う二つ目の冬だった

黄金の雪が止んだ
微風が辺りを撫ぜた
ミズナラの葉が一枚、もう一枚
カラ松の幹の間をゆっくりと舞い過ぎた
スローで乾いたメロディーが聞こえてきた
目で見る音楽に時間は止まったかのようだった






至仏山

広大な尾瀬ヶ原を見下ろす蛇紋様の岩の上に立つ
麓に巻き付いていた霧の大蛇は消えていた
あたりには無数のトンボが舞っている
ここは彼らの避暑地でもあった

山頂の西側はすでに霧の中
稜線に目をやれば世界の半分はすでに無かった
霧の端境を辿る稜線に不安を抱きながら下山につく

目の前でトンボたちが霧の中から飛び出てきては帰っていく
彼らの飛翔に迷いはなかった
霧の中は此処と繋がり、今があることを確信する
安心した私は長い下山路を鳩待峠に向かった




三原山

黒磯と黒砂の浜、そして黒い砂漠
地下深くからの噴出物が作った黒の世界
マグマは斜面を流れ下り黒磯と浜を作る
山上ではカルデラを埋め我が国唯一の砂漠を作った

炭のような黒磯の波打ち際
おろし金のような鋭利な岩の刃先が流木を擦りおろしていた
痛みが身体を走り背が震えた

黒砂の浜の波打ち際
寄せ引く波が描く幾重もの波紋があった
波が足を洗うのを忘れ見入ってしまった

「荒・穏」の対比がよくマッチした磯と浜
ともに光沢ない黒い世界が広がっていた

真っ黒なゴジラの体があちこちに立つ
ジオロックガーデンは彫像広場だ
朝日に光るススキの向こうに巨体がひとつ
荒涼とした台地を去る後ろ姿に哀愁がにじんでいた

流れる砂漠の黒砂を踏みしめながら黒い展望山に登った
一望する砂漠は黒く、点在する草株が黄金に光っている
砂漠の向こうの海がいっそう輝いて見えた
展望山から砂漠に降りた私は火口丘を目指し登山道を登り返す
あたりはまだ黒い世界が続いていた





浅間山

朝焼けの遠くの空に富士を眺め
今まだ陽の当たらぬ林に入る
音のない木々の空間に
硬い雪面を足裏で踏み締める音だけが響く

凛と冷えた林間を抜け
トーミの頭に上がると
山は薄化粧で待っていた
柔らかい曲線と流れる縞模様
思わず見惚れた

岩に貼り付く渦巻くエビのしっぽの迫力は
意思をも感じさせる昨夜の風の置き土産
黒斑山に登ると
角度を変えた浅間山の曲線が大きく迫る
優しくしなう曲線と流れる縞紋様を見ていると
山にも色気というものがあるんだと思った
























作品名:山の妄想詩 作家名:ひろし63