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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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床屋に行った

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床屋に行った



 二か月に一回は、床屋に行く。
六〇過ぎて身体の発育は止まったようだが、髪の毛は伸びている。
いつもの床屋さんだった。
先客が終わって、チェアに案内された。

「寒くなりましたね」と言われた。
〈寒くなったのは、私のせいでない〉と思ったが、反対意見を述べて関係をこじらせることはない。
「そうですね」と、無難な返事をすると、
「お正月はどうでした?」と、意外な質問を受けた。
〈そんなこと聞いてどうするのだろう?〉と思ったが、素知らぬ顔で、
「まあ、ボーっとしてるうちにすんでしまいましたね」と、けっこう、いい答ができた。

 愛想のいいおにいさんなのだ。
以前は、そのあと必ず、
「いつもどおりですか?」と聞いてくれた。
聞かれるたび、
〈今日は、いつもより、しっかりやってほしい〉と思っていても、口では「ハイ。お願いします」と答えていたものだった。
ところが最近は、(今日もだったが)、黙って作業に取り掛かる。
私は紳士だから、何も言わずに為すがままにさせているが、一言あってしかるべきではないのか。
作品名:床屋に行った 作家名:ヤブ田玄白