人生×リキュール カンパリ
ほうっと溜め息をついた彼女は視線を車窓の外に投げた。まるで、そこにかつての思い出が映し出され、それを順になぞっているような穏やかな顔つきをしている。
「死んでもいつも一緒だって」
床に落ちた光の窓が、弧を描いて滑り寄ってくる。次々と訪れるそれは、彼女のくたびれた靴先を一瞬エナメルのように輝かせては消えていく。その様子を、目を細めて眺めていた彼女はゆっくりと瞼を閉じた。終着駅まで残りわずか。
※カンパリ
ポピュラーな人気を誇る、イタリア生まれのビター系リキュール。名前の由来は、カンパリの創始者ガスパーレ・カンパリの出身地が平坦な農村地帯であり「野原の」を意味するイタリア語「カンパーレ」から来ている。度数は二十五度。宝石のような鮮やかな赤い色が特徴的である。カンパリの原料配合比率は、誕生以来門外不出となっており、ビターオレンジ果皮、キャラウェイ、コリアンダー、カルダモン、シナモン、ナツメグなど三十種類以上のハーブやスパイス類で構成されているらしい。1932年にイタリア国内で発売されたカンパリ・ソーダの小瓶が飛ぶように売れ、カンパリの人気は不動のものとなった。ビター系リキュールなので甘さは少ないが、ほろ苦味の中にハーブの風味を感じられ、女性からも好まれる傾向にある。
飲み方としては、ソーダやオレンジジュースで割った「カンパリ・ソーダ」や「カンパリ・オレンジ」がスタンダードだが、カクテルもオススメだ。スイート・ベルモットと合わせた「アメリカーノ」や、ドライ・ジンを加えた「ネグローニ」「ルナ・ロッサ」「フレッチャロッサ」「マーノエマーノ」といった様々な飲み方がある。
作品名:人生×リキュール カンパリ 作家名:ぬゑ