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空墓所から

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 それから数刻後、その化け物は青一の家に現れ、その家に住む老いた母の姿をほんの一瞬だけ目に入れると、一瞬悲しそうな顔をして、次の瞬間にはどこかへと逃げ去ってしまいました。

 その老婆は、後日、その化け物についてこんなことを言っていたそうです。

「ありゃ青一じゃ。姿形は変わっても目を見れば分かる。世間はいろいろ言いよるが、ありゃ、やっていいことと悪いことの区別はちゃんとつくやつじゃ。きっと今回のことも、何か理由があってのことじゃろて」

 これ以降、青一の姿も化け物の姿も見た者は一人としていません。しかし、青一が隠れ家にしていたあの緑の囲まれた場所には、時折、野生動物を食らった骨などが見つかっているそうです。


作品名:空墓所から 作家名:六色塔