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「猫」

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此処(ここ)は不変 此(こ)の上ない

小学校を卒業しても
中学校を卒業しても同級生が入れ替わる事 等(など)ない

然程(さほど)、長くもない休みが終わり
新たな門出を迎える為、高校の校舎に向かえば
入学式会場である講堂に案の定、顔馴染みの面面が居並ぶのだ

因(よ)って別れを惜しむ事 等(など)ない

写真撮影やら
此(こ)の後の予定やらに盛り上がる
同級生達を横目に早早に校舎から引き揚げる帰宅路

校舎裏の竹林が唐突(とうとつ)に揺れたのを
「猫」かと思ったのも束(つか)の間、「笹」の葉に塗(まみ)れた少年が飛び出して来た

「何、してるの?」

見れば相当、草臥(くたび)れた体(てい)の少年に問い掛けるも
無言のまま頭髪に突き刺さる、「笹」の葉を払い出す

毎度の事だ
碌(ろく)すっぽ返事をしないのは毎度の事だ
溜息 交(ま)じり、少女は「笹」の葉を払う少年を手伝う

「お前こそ何で帰る?」

漸(ようや)く返って来た「答(こたえ)」が「質問」とは笑える

卒業式が閉会したら
恩師である先生方への挨拶が済んだら速やかに帰るのが当然だろう?
其(そ)れこそ参列した母親二人に捕まらない内にとっとと退散するのが「吉」だろう?

「お袋も」
「お前の母ちゃんも」
「彼奴(あいつ)等(ら)も探してた」

彼奴(あいつ)等(ら)とは同級生の事だ

「大丈夫」
「彼奴(あいつ)等(ら)との集まりには行く」

此(こ)の旅立ちを祝って同級生の家族が営(いとな)む、鉄板焼き屋で祝賀会だ
参加する気 等(など)、なかったが母親の情報網で見事に筒抜け
「夕飯ないから」と、言われれば行かざるを得(え)ない

頗(すこぶ)る成長期だ
一食、抜いただけでも目が回る

然(そ)うして一枚、手に取る「笹」の葉を眺める
自分に少年が握(にぎ)る右手を差し出す

拳(こぶし)を開(ひら)く右手の平に視線を注(そそ)ぐ
其処(そこ)には(少年の)学生服の第二 釦(ボタン)が転がっていた

「いらない」

即座(そくざ)に辞退する自分の目の前で
後にも先にも見た事がない素(す)っ頓狂(とんきょう)な顔で立ち尽くす
少年に多少の罪悪感が湧いたのか、仕方なくも付き合った

付き合った結果、何時(いつ)の間にか少年の背後に忍び寄る
同級生の女子生徒が腕を伸ばすや否(いな)や
右手の平の第二 釦(ボタン)を掻(か)っ攫(さら)う瞬間を目撃した

「!!いただき!!」

其(そ)れだけではない
戦利品を掲(かか)げて一目散に駆け出す同級生の後を
続続と駆け付ける数人の女子生徒達

第二 釦(ボタン)は諦めたが
其(そ)の他(ほか)の釦(ボタン)に目を付けたのか

少年の学生服に群(むら)がり次次と釦(ボタン)を引き千切(ちぎ)っていく
或(あ)る意味、洒落怖な光景に言葉を失う

成(な)る程、少年は此(こ)れから逃れる為
校舎裏の竹林を突っ切って来たのか、と合点(がてん)がいった

「きゃっきゃ、きゃっきゃ」
笑い声を上げて、走り去って行く女子生徒達を見送りながら

「よ、色男」

冷やかす自分の言葉に気怠そうに項垂(うなだ)れる
少年に差し出す、「笹」の葉一枚

当然、何も言わず受け取った
少年が慣れた手付きで笹船を完成させ、笑う

希少種の「猫」を飼うつもりはない

自分の「モノ」はいらない
自分は他人(ひと)の「モノ」が欲しい

彼(あ)の時の
彼(あ)の時の顔が忘れられない

自分も彼(あ)の時の彼女のような「微笑み」を浮かべたい

とことん歪(ゆが)んだ人間だ

作品名:「猫」 作家名:七星瓢虫