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「やっぱ、無理があったみたい」(掌編集~今月のイラスト~)

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「小学校の先生になるのが目標で教育学部に入ったんだよね、その目標は子供の頃からずっと変わってない、で、いつかは良い人と出会って結婚するんだろうなって思う、相手は先生かもしれないしそうじゃないかもしれないけど、お金持ちだったりイケメンだったりじゃない気がするの、でもきっと優しい誠実な人で、その人の子供を産んでお母さんになって、一緒に一生懸命育てて行くことになるんだと思う……なんかそんな未来が見えちゃうとつまんない人生のような気がしてそれに逆らいたくもなったんだけどさ、胸に手を当ててよく考えてみたんだ、そんな人生をあたしは望まないんだろうか? 平凡で穏やかな人生じゃ満足できないの? って……そしたらね、気づいちゃったんだ、ちっとも嫌じゃないって、ちょっとくらい退屈でも平穏で幸せならそれで充分だって……だからそんな自分を受け入れることにしたんだ」
「うん、優子はそれで良いと思う、そうやって地に足を付けて歩いて行けるって言うのも一つの才能なんだと思う、たぶんあたしは優子とは違う人生を送るんじゃないかって気がするけど、なんか変な方向に向かって行っちゃいそうになった時、優子を思い出して、優子と逢って話したら道を踏み外さないで済むんじゃないかみたいな……」
「わたしがそれほどの者かどうかわからないけどね」
「ううん、きっとそうだよ、だからすっと親友でいてくれる?」
「もちろんだよ、地道な人生だって決断しなきゃいけないことってきっとあると思うんだ、そんな時優香を思い出して、優香と逢って話したら決心がつきそうな気がする、だからこっちこそずっと親友でいて欲しいな」
 そう言って両手を握り合ったんだ。
 
 こうやってわたしの『茶髪騒動』は終わったんだけど、わたしと優香の物語は終わらないよ、多分どちらかが一方でも生きてる限りね。
 わたしと優香の人生のレールって真っ直ぐ並んで伸びて行くものじゃない気がする、絡みあったり離れたり……でもお互いに相手を見失うことはない、みたいな……。
 そんな親友と出会えたことは幸福だし、ちょっと背伸びしてみたりしたことはきっと私にとって必要なことだったんじゃないかって。
 だから、今度わたしが髪を染めることがあるとしたらそれは白髪染めだね、きっと。