悠々日和キャンピングカーの旅:⑥びわ湖一周の旅(滋賀県)
JR西桑名駅前の乗降用のスペースにキャンピングカーを止めて、念のため、その前の交番に確認したところ、駐車はダメよと言われるも、ちょっと駅までと言って、軽便の西桑名駅の線路の先の車止標識の裏側へ回った。ちょうど運良く、幅の狭い黄色の電車がホームにゆっくりと入って来て停車。折り返し運転までの間、写真を撮った。その風景は、約8年前に取材をした時のままで、懐かしい情景を楽しんだ。
ちょっと長い時間、停めてしまったキャンピングカーのことが気になりながら戻ったが、特に問題はなかった。
桑名から関ケ原に向かう途中、北勢線の終着駅「阿下喜(あげき)」の横の「軽便鉄道博物館」に立ち寄った。残念ながら、営業時間外で、車両倉庫のような建屋の中には入れず、屋外保存の「旧近鉄モニ220形」の写真を撮るだけになった。
近くに「あじさいの里」という温泉があり、コロナ感染が気にはなるが、入湯することにした。
出発してまだ半日で、旅の疲れも感じないが、気持ち良い温泉だった。湯船に浸かっての地元の方々との会話が好きな私だが、さすがに今は、コロナ感染が気になり、会話を控えた。コロナで世の中が変わってゆくような気がした。
関ケ原までのR306は上りで、緩やかなカーブが続く山間の道だ。運転席の窓に加え、ダイネットのスライド窓も全開で走った。湯上りの身には気持ちの良い風が吹き込んだ。しかしながら、かつてバイクで、全身で風を感じながら走った時のような“爽快なクルーズ感”は感じられなかった。
キャンピングカーの後部にパラモーター積載用のキャリアを設けたいと考えているが、小さな50ccバイクの積載も可能ならば、旅の幅が広がるのだろう。そのためには、自宅で修理を待っているバイクに、これから、時間を割くことになりそうだ。
関ケ原で時間を費やすならば、びわ湖の畔で車中泊する場所を探す時間が少なくなるため、長居はしないつもりでいたが、立ち寄った「岐阜関ケ原古戦場記念館」は、入館の最終時間は過ぎていて、JR関ケ原駅近くの観光案内所は既に閉まっていて、結局、JRの駅舎に少し立ち入ったのみだった。
伊吹山(いぶきやま)を右手に見ながら、JR東海道本線と並走するR21を走りながら、びわ湖に向かって標高を下げていった。正面の西空には日没が迫っていた。びわ湖の対岸の比良(ひら)山地に沈む夕陽に間に合えば、湖に映る夕暮れの写真が撮れるのだが・・・、こんな時に停まる赤信号は長く感じる。
R21から枝道に入り、やっと湖岸道路にたどり着き、どちらに行こうか迷ったが右折して、その直ぐ先に、キャンピングカーを停められるスペースを見付けた。デジカメを大急ぎで準備して、念願の写真を撮ることができた。
おやっ、何だ? 湖面を見ると直径1mほどの渦が巻いている。岸辺まで下りて目を凝らすと、かなりの数の稚鮎が円を描いて泳いでいた。これは何と呼ばれる習性なのか、現象なのか分からないが、“珍しいものに出会えてラッキー”と思うことにした。
日没後の薄暗くなった湖岸のさざなみ街道(湖岸道路)を北上しながら、今夜の車中泊の場所を探した。
ナビで、道の駅「近江母の郷」を見付けた時は安堵した。少し走って到着。駐車場に停めて、ショップに入ろうとしたが、既に営業時間は終わっていた。道路から離れて、トイレにも近い駐車場所を探しながら、道の駅の建物の正面や裏手にも行ったが、何となく、ここじゃないなと感じ、更に北上することにした。
湖岸にはキャンプ場や水泳場はあったが、この道路の傍にあるため、静かな夜にならないと思われたので、そこもパスして、さらに北上を続けた。
とっぷりと日が暮れた中、豊臣秀吉が築城した長浜城が近付いてきた。ライトアップされた城は美しく、その一帯は湖に面した豊公園(ほうこうえん)だ。その横を走り抜けると、灯りが無くなり、一気に暗くなった。その先の道の駅「湖北みずどりステーション」に向かうことにした。
夜の帳が下りてから走ると、果たしてこの先に、道の駅があるのだろうかと心細くなってくる。キャンピングカーのライトが照らす進行方向に浮かび上がる道と、時折すれ違う対向車のヘッドライトの灯り以外は暗闇だ。湖面越しに遠い対岸の灯りがあったかもしれないが、それを見る余裕はなかった。やがて、道の駅の看板が見えた時は正直、心が緩んだ。
先ずはトイレの確認だ。清潔なトイレではあったが、天井近くに幾つものツバメの巣があり、近いものは、立って手を伸ばせば届きそうで、その糞(ふん)が気になるが、まあ及第点だ。この道の駅は、鳥を大切にしているのだろうと解釈した。
トイレの前のマップボードの前にモンキー125が停まっていた。私たちの年代にとっては、ホンダのモンキーといえば50ccなのだが、その生産・販売が無くなり、125ccになってしまった。缶コーヒーを飲みながら小休止していたそのライダーは若い女性で、「このバイクは大きくて、かわいくないよね」と話し掛け、少し気を悪くさせてしまったかもしれないが、会話が弾んだ。
モンキーが出ていった後、キャンピングカーを停めた場所が道路に近かったため、少し奥の方へ移動した。そこは、道路を走るクルマの走行音は聞こえず、トイレに近く、隣に駐車している車はなく、大型車の駐車場からできる限り離れた場所で、それは、これまでの「キャンピングカーの旅」の経験から分かってきた“車中泊のベスト・ロケーション”だ。加えて、目覚めた朝、ダイネットの窓から美しい景色が見えれば最高だ。
道の駅のショップはとっくに閉まっており、美味しい地のモノは買えず。なので、夕食は、自宅から持ってきたものをフライパンで温め、ひとり旅だからなのか、ちょっと食べればそれで満足だ。
以前に買ったテレビ用の小型ロッドアンテナは「キャンピングカーの旅」には不適合だと結論付けたが、湖の横なので、ひょっとして受信するのではと思い、試すも、チャンネルスキャンができず、やはりダメだった。そこで、ビデオを見ながらの食事になってしまった。
気が付くと、網戸から小さな虫が入り込んでいる。網戸のメッシュが少し大きいためで、周囲の畑から、キャンピングカーのダイネットの灯りに集まってきたのだろう。ティッシュで取りまくったが、殺虫剤は必須だと気付いた。「前日までの準備リスト」に加えることにした。
ところで、長浜からかなり北上したようで、この道の駅の場所はびわ湖のどのあたりかと、ロードマップで確認したところ、既にびわ湖の湖北エリアに入っていることが分かった。それならば明日は、びわ湖の北側にある「余呉湖(よごこ)」に行ってみることに決めた。
そして、PC(パソコン)に、今日の主な出来事のメモを入力した。この情報は後日、紀行文のベース情報になる。
バンクベッドに上がり、その両側の小窓を網戸にして、布団に横たわり、眠りに就いた。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑥びわ湖一周の旅(滋賀県) 作家名:静岡のとみちゃん