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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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40話 チョコレート騒動






おはようございます、五樹です。今回は、日常のちょっとした話をします。


ところで皆さん。大体あとひと月すると、バレンタインデーですね。

え?急に季節感が出た?そうですね。

この間僕は、ちょっと冗談を言う為に、バレンタインを引き合いに出し、Twitterでこんな話をしていました。


“人間関係が無の僕にチョコレートをくれる人なんかいませんからね。この子にチョコレートをくれる人がいれば別ですが、それは僕が食べる訳にはいきませんし”


僕は、この子の周りの人間であっても、必要以上に親しくしないようにしています。この子が周りと触れ合って心を癒す、それを邪魔したくないからです。

一応、この話を本気に取られないように、時子に気を遣わせてしまわないように、眠る前に「チョコレートは受け付けていません」とも書きました。

でも、目が覚めた後でそのツイートを見た時子は、「じゃあ買ってきてあげないとね!」と決めてしまったのです。


もし、“じゃあ”と口にするなら、「受け付けていない」という文脈の方を読み取って欲しかったなと思います。“チョコは要らないかな?”と。

物をもらっても、僕はこの子に特別だと思われている訳でも何でもありませんし、彼女が僕の為にチョコレートを用意する理由は、すぐに見通せました。

時子は心の中で、うきうきと胸躍らせ、こう呟きます。

“いつもお世話になってるから、お礼にしよう!”

ああ、そういう親切心は、断る事が出来ないだけ、男心を傷つけていくものです。時子は女性ですから、僕には女心も解るはずなのですが、どうにも解りません。


そして時子はある日、わざわざ電車に乗って大きな駅に行き、駅ビルに入っている高いスーパーマーケットで、外国産のチョコレートを買いました。それは今、僕の手元にあります。

僕の好きな、ハイカカオの板チョコレート。美味しいです。

「ひと月位早いんじゃないか」とか、「所詮義理チョコだろう」、「板チョコかあ」とは思っても、男にとって、チョコはチョコである。かもしれません。


僕が考えるに、僕が時子を女性としても愛するのは、僕が持つ「自己愛」と、それから、「自分に愛されたい」と望む心も僕が持たされているという事ではないでしょうか。

もしくは、僕には彼女がとても素晴らしい女性に見えるので、別の自我を持つ男性人格である僕には、必然だった…という単純な理由かもしれません。どちらにせよ、時子にとっては、困らせられるだけです。

でも、僕は自分だけの欲望の為には生きていません。その為に生まれた訳でないのはきちんと理解しています。

とりあえず今は、板チョコ1枚分というのが割と多かったという事実を、頑張って咀嚼していくだけです。


ここまで聴いて下さり、有難うございます。今回も少し薄気味悪い話になってしまいましたが、懲りずにまた読みに来て下さると嬉しいです。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎