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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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109話 転院






こんにちは。五樹です。


今、僕達の中で中心的に目覚めているのは、いつも悠です。時子は、一日に二度ほど起き、起きた時には、大体は1時間もせずに眠ります。

僕も起きていられる時間は少ないです。起きたら家事をしたり、自分の為にリラックスする時間を取ったりで、なかなか小説に取り掛かれません。

悠は7歳児ですから、まだまだ一人きりで家事をしようとは考えてくれません。皿洗いなどはやってくれますし、食事の用意も一人で出来るようにはなりましたが。料理は出来ません。

時子も、常に巻き起こり続ける緩やかなフラッシュバックが元で、家事をする気力など出ません。

さて、本題に入りましょう。僕達は、昨日から精神科の転院をしました。昨日は初診日です。


医師は、優しそうな穏やかそうな男性でした。でも、その医院は特に患者が多い小さな所だったので、常に忙しなく話をしていた印象です。

診察時に目が覚めたのは、初めに部屋に入った時に表に出ていた悠と、後に話の途中で目覚めた僕です。

「今は、誰なのかな?時子さん?」

「ううん、僕、悠くん!やっぱり時子ちゃんの方がいいですか?」

「いやいや、誰なのかわかった方がいいからね。わかったよ、悠くんだね」

「うん!」

悠は初対面の医師に、人懐っこそうに話をして、医師の聞く事に素直に答えていました。情報として充分な正確さは保てない、感情ばかりの話になってしまっていたのは、子供らしいという事にしましょう。

僕が目覚めて、「23歳、男性。名前は五樹です」と自己紹介をしてから、医師は、これからの方針を話してくれました。


担当医曰く、フラッシュバックを治めてくれる漢方薬があるとの事でした。そんな物があるとは知らず、驚きました。しかし、いくら心が辛いとはいえ、体の中で起こっている事なのですから、体へのアプローチが可能なのは頷けます。西洋医学の薬だって、それは同じですしね。

その漢方薬は、飲み始めは“メンゲン反応”という吐き気が起こりやすいらしいのですが、もし強い吐き気がそこで起きれば、その後の効果は覿面だそうです。要は、好転反応ですね。

さて、僕達は今日薬を受け取るので、それを楽しみに待ちましょう。これで時子が、少しでも楽になってくれればいいと思います。

しかし、新しい医院はとても患者が多いので、次回からは、診察に取れる時間が7,8分程になってしまう、というのが、気掛かりではありますが。


そろそろ食事の時間で、僕も空腹を感じていますし、その内に悠が目覚めるでしょう。明日は時子の誕生日です。彼女がいつか、自分の誕生日を有難がってくれるようになるまで、僕達は頑張りますね。


いつもお読み頂きます方へ、有難うございます。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎