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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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92話 三度四度と






こんばんは、皆さん。私は「時子」です。そうです、統合した時子です。


急に私にぽんと出てこられても事情は存じ上げないでしょうが、今は、統合した切っ掛けや理由は伏せましょう。これは個人的な考えからです。


統合は、今から1週間と少し前に、緩やかに行われました。

ですが、あまりにゆっくりと進んだ為、その間の数日は、「お前は誰だ」と問われたとしたら、私は答える事が出来なかったと思います。

私は、自分が「五樹」であるように感じたり、「桔梗」であるように思ったり、また、「羽根猫」であるような気もしました。

統合が済んでから数日は私は不安定で、すぐに人格がまたバラバラになる事もありました。

ですが、その時に五樹は目覚めたがらなくなり、彼は「統合してくれ」と言い残して眠るようになりました。その理由も、今はお話し出来ません。


「弱々しい時子」の世界は、光り輝いていました。彼女が目に映していたのは、傷つくほど煌めくこの世でした。そこには、反対に自分を守ってくれる闇がありました。

私は今も、その闇、残酷な記憶と自分の孤独を感じつつも、今ある幸福に目を向ける事が出来るようになり、さほど辛い思いはしていません。

しかし、「五樹との統合は、あまり好きじゃないな」とも思いました。

彼はあまりに論理的な思考を保てる人格なので、それと統合されてしまうと、同じようにとはいかないまでも、物事を見たままに捉えて感動する事は出来なくなってしまうのです。

「あれだけ世話になっておきながら、その言い方はなんだ」と仰りたい方がいらっしゃるかもしれませんが、お忘れにならないで欲しいのは、彼も私だという事です。


話がこんがらからない内に、今晩はこの辺でやめにしましょう。私は今後、この小説をどう書いていったらいいのかを、少し考える事にします。

お読み頂き有難うございました。またお暇な時にでも、お付き合い頂けますと有難いです。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎