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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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帰りの電車で人身事故だった

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 笑い声のほうを見ると、四人連れの熟年の男性グループだった。
だいぶアルコールも入っている感じだ。
〈そうか、ゴルフだ。私の病院の奥のゴルフ場で、一日遊んだ帰りなのだ。今日はまだ、木曜日だぞ。まだ週の途中だぞ。それなのに、彼らは遊んでいる。冗談言って笑っている!〉

 アナウンスがまたあった。
「ただいまの状況では、復旧まであと四十分ぐらいかかる見込みです」と言った。
四人のうちの一人が
「じゃ俺、駅前酒場で一杯やってくるから」と出て行った。
残った三人は
「あいつは飲み始めたら三十分じゃ帰ってこれないヨ。きっと電車に乗り遅れるナア」と笑っていた。

 賑やかな四人組に気を取られて気づかなかったが、私の真向かいには、私ぐらいの年配の品の良さそうな男が腰かけていた。
ボストンバッグを抱えていた。
ジャケット、靴、眼鏡など一流品のようだ。
男は、バッグから小さな袋を取り出した。

 袋の中は、ピーナッツと柿の種であった。
眼鏡の紳士は一個ずつつまんで、口に運んだ。
〈家まで待てないのだろうか?〉