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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 8 元カレが帰って来ると

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プロローグ



「そんな高いワイン頼まなくってもいいのに」
「今のシャンパンだよ」
「解ってるよ。スパークリングワインだもん」
「え? シャンパンって、ワインなの?」
「・・・春樹君、まさかそれ知らなかったの?(笑)」

 川崎恵美莉はいつもよりおとなし目に笑った。それもそのはず、今彼女が座っているのは、慣れない高級フレンチの広いホール中央の席だからだ。その場所は特別に予約された特等席なのである。過剰なほど大きなフラワーアレンジメントのそばでは、ピアノとフルートが静かに生演奏され、それを背に座る菅生春樹が、照れ笑いを隠そうと落ち着きなくキョロキョロと周囲を見回しているそのシーンは、場慣れしたホールスタッフには、微笑ましくさえ思える。

「シャンパーニュっていう地方で造ったやつが、シャンパンって呼ばれてるのよ」
 本当は笑いながら突っ込みたいところだったが、恵美莉は淑女を気取り、背筋を伸ばしてナプキンを広げながら、おしとやかに説明した。
「スパークリングワインって、炭酸で割ったやつじゃないのか?」
「う・・・ん、そんなんもあるのかもね」
ちょっとムズ痒そうな表情になる恵美莉は、気を持ち直してこう言ってみた。
「ワインベースのカクテルも色々あるから。後で飲もうか、ミモザでも」
少し顔を近付けた恵美莉に、春樹は腰を引いて椅子の背にもたれかかった。
「恵美ちゃん、お酒に詳しいな」
明らかな情報量の違いから、いじけるような表情になった春樹に、無難な説明をしようとしたが、酒好きが過ぎないような適度な理由が思い付かないので、次のように言い訳した。
「エルモのマスターがいろいろ教えてくれるからよ」
※エルモ:恵美莉行き付けのバー『St.Elmo’s Fire BAR(セント・エルモス・ファイヤー バー)』
「ああ。駅前の?」
「春樹君が言ってるのは『マリモ』でしょ」
「そのカフェじゃないの?」
「その隣のビルにあるバーよ」
「そんなとこよく行くの?」
春樹はまだ曇った表情で話している。
「うん、クラスの飲み会はいつもそこだって、前に話したじゃない」
「へえ、そうだっけ?」
「行ってみたい?」
「いや。俺はお酒はいいよ」
「前もそう言った」
春樹がようやく笑顔に戻り恵美莉を見た。
「でもお祝いにはシャンパンが付き物だろ」
「そうね。ありがとぅ~」