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裸足の花嫁~日陰の王女は愛に惑う~【後編】

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「変わってしまったあなたをも私は愛するだろうね」
 チュソンが差し出した手に央明の手が重なる。
「そろそろ行こうか、先はまだ長い」
 チュソンの言葉に、央明が嬉しげに彼を見上げた。
 丘からは果てしなく前へと道が続いている。チュソンは眼を細め、最後にもう一度だけ都の遠景を眺めた。
 長い長い旅路になるだろう。今はまだ想像もできない試練もあるはずだ。
 それでも、愛する人と共に歩めば、きっと乗り越えられると信じたい。
 地方へと続く細い道沿いには、早咲きの水仙が群れ咲いている。この道があたかも二人を未来へと導いてくれるかのように、ずっと先まで延びている。
 都の長い冬に降り積む雪を思わせる真白(ましろ)な花は、道沿いに果てなく続いている。早い春を予感させる可憐な花たちは、あたかも若い二人の旅立ちをことほいでくれるかのように清らかに咲き誇っていた。
  
 

 その後、ナ・チュソンと央明翁主の姿を見た者はいない。
 祝言を挙げてわずか数ヶ月後、ある朝、二人の姿は新居から霞みのように消えていた。
 王妃は狂ったように二人のゆくえを追跡させたが、結局、しらみつぶしに探しても二人が見つかることはなかった。
 科挙に首席合格し、将来を嘱望され十八歳の若さで吏曹正郎に抜擢されたナ・チュソン。国王の第八王女として美貌を謳われるも、外戚という後ろ盾を持たず?日陰の王女?と呼ばれた央明翁主。
 二人は謎の失踪を遂げ、永遠に歴史の表舞台から消え去ったー。
 二人に何があったのか?
 歴史は永遠に黙して語らず。
 
                 (了)
 
  
 
 
 
 
  














水仙
 花言葉ー神秘 
   

白藤
 花言葉ーけして離れない、歓迎、恋に酔う 
    
蝋梅
 花言葉ー慈しみ、ゆかしさ、先見、先導

椿
 花言葉ー愛嬌、謙譲、申し分のない美しさ 
 






















    あとがき

 思えば、長編「裸足の花嫁」第一話を書いたのが今から丁度一年前でした。この一年、じっくりと一つの作品に取り組み、一年かけて漸く物語りを完結させることができました。
 最近、私はとても大きな試練を経験したのですが、へこたれることなく前向きに受け止めて進んでゆければと思います。
 そろそろ次の作品の執筆に入る気持ちの切り替えも必要です。やはり創作は私にとっては大切なライフワークなので、体調に気をつけながらもマイペースで続けてゆくつもりです。今度は、どんなヒロインに出逢えるでしょうか、私自身も楽しみです。
 いつも拙い作品を読んで下さる方々へ、心からの感謝を込めて。

                           東 めぐみ拝

二〇二二年十一月吉日