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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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続 金曜の夜、人間は二つに分かれる

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 今日のメニューは、
「鰆の照り焼き」「キュウリとワカメの酢味噌和え」「アロエヨーグルト」である。
さっぱりした献立で暑い日にはどれも合格だ。
特に、酢味噌合えの容器の色がよかった。
コバルトブルーで、ワカメとキュウリが海に浮んでいるようだった。

「検食簿」を見ると、前回の医者は、総合所見に「おいしかったです」と記入していた。
私は、もう少し気持ちが伝わるように、
「とてもおいしかったです」と記入した。

 検食を終わって部屋から出ると、隣室から出てきた皮膚科の部長とすれ違った。
「当直ですか?」と聞かれた。
空の食器をのせたお盆を持っていたからだ。
病院の中で、お盆を持って歩いている医者は、当直以外には考えられない。適切な質問だと思った。

「エエそうです。先生は検食したことありますか?」と聞くと、黙っているので、
「おいしいですヨ」と言ってみた。
「どんなものが出ましたか?」という質問があれば、三〇分ぐらい解説できる用意があったが、部長は忙しいらしく、何も聞かず、そのまま帰ってしまった。

 その後、業務は順調に経過して、十時過ぎには、当直室のベッドに横になった。
今日は、「検食」に神経を使ったせいか、疲労感が強く、朝までぐっすり眠ってしまった。