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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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続 金曜の夜、人間は二つに分かれる

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 午後6時、「検食」の時間になった。
「検食簿」を見ると、今月は私が三人目。
まだまだ検食する医者は多くない。
リピーターばかりだ。もしかすると、小遣いが少ない医者だけかもしれない。
院長の名前もあったが、院長と私は別格だろう。
「検食」するのは、小遣いの問題ではなく、重要な任務であることを認識しているためだ。

 前々回(去年一一月)の「検食記録」を懐かしい気持ちで読み返した。
「ビーフストロガノフ」が出て、感動のあまり、DNA検査に必要な材料を残さず食べてしまった日である。(記憶している読者はいないだろう)
総合所見欄に、私の字で「良好」と記入されていた。
あの日私は、
〈ビーフストロガノフを食べたのは、たしか一〇年ぶりのような気がします。感激しました〉と書こうとしたが、バカにされると思って、思いとどまった。書いたほうがよかったのだろうか。