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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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感謝せずにはいられない

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 8時。病棟の巡視。
今日の看護師長は初めての人だった。
私は見たことがなかったが、彼女はこの病院に一五年もいるという。
むこうも、私のことをあまり知らないようだった。
私は二〇年ぐらいいる。
長いこと同じ屋根の下にいても、よく知らない人はいるものだ。
お互いに避けてきたのだろうか。
Sの話によると、一般の家庭でもそのようなケースは珍しくないという。

 巡回の途中で、彼女のPHSが鳴った。
表情からただならない様子が伝わってきた。
「○○看護師からの連絡でした。男からの電話で、いきなり、『Y先生を出せ』と言ったそうです」
私はドキッとした。