最後の「夜間院長」だった
自動精算機で会計したが、治療費の安いのに驚いた。
今日は一時間以上かかって、たいへんくたびれたが、部長のほうも疲れただろう。
「仮」かもしれないけれど、白い歯が入ったのだから、最低3000円ぐらいは払うことになるだろうと思った。
ところが、請求額は390円だった。
三割負担だから今日の治療費は全部で1300円だ。
再診料が380円で歯科処置料はわずか920円。
部長の労働時間が一時間以上、そして、プラスチックかも知れないが、歯を入れたのだから、総額千円未満は、どう考えても安すぎる。(下駄の歯だって千円はとられると思う。)
自動精算機から「オダイジニ」という声が出た時は、なんだか胸が一杯になった。
自室に戻って鏡に映すと、仮歯が白く輝いていた。
自分の歯より美しくしっかりしている。
〈これが仮歯なら、本式の入れ歯はどんなに素晴らしいだろう。〉
次回がますます楽しみになった。
作品名:最後の「夜間院長」だった 作家名:ヤブ田玄白