最後の「夜間院長」だった
部屋に戻って、腰をおろすと、膝がまた元のように腫れていた。
無理して歩いたせいだろう。
〈昼間、せっかく抜いてもらったのに・・・〉私は悲しくなった。
それより、
〈もし今夜、誰か脱走したらどうしよう。とても追いかけられない。院長が脱走患者を逃がしてしまったら、問題になるだろう。何とか、今夜だけは誰も脱走しないでほしい〉
私は、祈りながら当直室のベッドに入った。
翌朝6時に目覚めた。
どうやら無事だったようだ。
今日の入院患者さんは、皆、いい人ばかりだったのだろう。
私はベッドに腰をおろし、感謝とともに新たな決意に燃えた。
〈次の夜間院長までに、必ず膝を治しておこう。そして、脱走患者を捕まえるのだ〉
作品名:最後の「夜間院長」だった 作家名:ヤブ田玄白