最後の「夜間院長」だった
8時になった。
膝も心も軽くなって、看護師長と院内巡視を開始した。
看護師長は、スラッと背の高い元気そうな人だった。
彼女は大またでドンドン前へ進む。
私は早足でついて行った。
途中で、すこし膝が痛くなりかけたが、
「アノォ、ちょっと待ってヨ」と声をかける間もなく、彼女は前へ進んで行く。
巡回が終わるころ、彼女が言った。
「この前、私が当直のとき、入院患者が脱走したんですヨ」
「ヘェ」私は驚いた。
「脱走したらどうするの?」
「追いかけるんです」
「エッ、そうなの」私はもっと驚いた。
作品名:最後の「夜間院長」だった 作家名:ヤブ田玄白