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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
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そらのわすれもの8

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8-1


琴恵は優太を真っ直ぐ見る。ファーストフード店の窓から見える景色は、すっかり日が傾き空は暗くなり出していた。
「竜也…天野先生に問い詰めたけど、はぐらかされるだけで、あなたにどういうつもりで知秋のことをばらしたのか分からない。」
琴恵はさっきから変わらず知秋の頭を撫で続けている。
意識のない知秋は嫌がる素振りもなく、なすがままに撫でられ、髪が乱れた。
その姿に優太は嫌悪感を抱いた。
「どこまで聞いてる?何か頼まれた?」
琴恵は気にせずに知秋の頭に手を乗せたまま、会話を続ける。
「何も聞いてません。」
優太は答えた。
「ふーん…。」
琴恵は知秋に目線を落とし、一言言った。
「それなのに得体の知れないこの子に関わるなんて物好きね。」
その言葉は優太の気に触った。
琴恵は尚も優太の様子を注意深く見る。その間も手は知秋の頭に乗ったままだ。
「さっきから、触りすぎじゃないですか?」
優太は琴恵の手を掴んだ。さっきから知秋の頭を触り続けるのが気になって仕方なかった。
琴恵の手はひんやり冷たく、か細く、優太は少し驚いた。
琴恵は意外な優太の動きに動揺し、優太の手を振り払い、自分の胸元で両手を重ねた。
「身内面?たかが出会って僅かなくせに。何を竜也から聞いたの?」
睨み付ける琴恵の顔は髪がかかり、隙間から見える形相は怖い。
「さっきから言ってますが何も聞いていません。貴方はどうして知秋を物のように扱うんですか?」
優太はさっきから…いや、ずっと知秋と出会った時から感じていた憤りを琴恵にぶつけた。