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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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故郷へ帰った (一)

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 私はしばらくぶりの出席なので、優先的にあいさつさせられた。
幹事の温かい心配りらしいが、私には迷惑だった。
しばらくぶりは私だけでなく、十人ぐらいいた。
卒業年次の順に、一人三-五分の予定であいさつする。
年寄は話が長い。
それに、やけにアツく語る。
一〇分以上、平気でしゃべっていた。悪酔いしているのかもしれない。

 昔の学生運動の話を延々としゃべった。
あの時、誰がどうしたから闘争は成功しなかったとか、それでも俺はいろいろ活躍した、とか、まるで昨日のことのようにしゃべる。
それなのに、さっき玄関で、
「こんにちは、お久しぶりですね、ヤブ田です。」と挨拶してから、一〇分後にトイレで会った時には、
「どなたでしたっけ?」と忘れていた。
直近のことを覚えられないのは「認知症」の特徴だ。大丈夫なのだろうか。

 先輩たちは次々に、自慢話をし、他人を貶して、まるで子供のようだった。
ウンザリした私は、なるべく印象に残らないあいさつがしたかった。(いつも自然にそうなるが)
私のあいさつは、声が小さく、内容も乏しかったのだろう。
誰にも注目されなかったようだ。