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新しい出会い

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その10


昨夜の九時すぎに我家のインターフォンが激しくなった。
この夜更けに誰だろう、通話ボタンを押すと画面に眼鏡を掛けた女性の顔が写っていた。
もしかして近所のあの人?急病かしら、それとも緊急の用事?と思いながら急いで門まで行き鍵を開けた。そこに尋常でないほどパニック状態の彼女がいたのだ。彼女は私を見ると、あっ!無事でいたのね、ほっとした、と言った。

何のこと?と聞く私に、彼女はタクシーを待たせてあるから帰るね、と背を向けてタクシーに乗り込んだ。彼女は家に着いた時点で電話をしてきた。
私の家に三度電話を掛けたけど出なかったので、てっきり血圧で倒れてると思ったらパニックになり飛んで来たという。

私のスマホはその時別室で充電中。
ゆったりとパソコンの前で寛いでいたので、びっくりしたのは私のほうだ。

彼女曰く、すぐに救急車を呼ぶつもりで駆け付けた、心配だとすぐパニックになるのよという。
びっくりしたのはこっちのほうよ、とやんわりと皮肉ったわたし。

スマホで話してる途中ぷつんと切れたときもパニックになり、私がスマホを握ったまま倒れたんじゃないかと心臓がばくばくしたと言ったことがあった。

いちいち私に思いを馳せてパニックになられたんじゃ、こっちが迷惑、と言いたいところだがそこは大人だから、ありがとうと。
タクシーを見送るとき、遠いところをわざわざ来てくれてありがとうね、と言ってはみたが。

ちょっと異常じゃないの?という気持ちが頭をかすめた。



作品名:新しい出会い 作家名:笹峰霧子