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家守り ~house lizard~

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 昔、祖父に聴かされた事を思い出した。ヤモリは家を守るから家守りなんだと。害虫を捕食し、余計な虫が家に付かないようにする必要な存在だと。万一ヤモリが襲われ、自分の尻尾をちぎられても、あとからちぎれた尻尾を食べに戻ると。食べれば不足した栄養は取り戻せる。けれど、もしもその体の一部を、僕が右のポケットに入れて、持って帰ってしまっていたら。

 僕はヤモリの目の前に、ちぎれた右腕をそっと置いた。

 僕は車に向かって歩いた。その車には、5匹のヤモリが目に映った。



「おいおいどうしたんだよ! けど、帰りは運転してもらうからなあ! ハハハ」



 友達全員が僕の背中に懐中電灯をあてる。逆光の中、僕が右手をヤモリに向けると、姿を消した。僕たちには、用が無くなったように。



     ―了―
作品名:家守り ~house lizard~ 作家名:ェゼ