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あの日、あの夏、あの子に向けて

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 薄暗い室内。

 ベッドの上、一人の少年が天井をぼーっと見つめている。

ツバサ『嫌になるくらい眩しい日差しで目が覚める。蝉の声も耳障りに感じ、汗をかいてじとっとする体よりも眠気が勝つ』

 寝返りをうち、今にも目が閉じそうなくらいの眠気を感じる。

アオイ『階段を小気味よく登っていく。あたしは夏休みだからって、だらけているお寝坊さんを起こしに来たのだ』
ツバサ『夏休みだし、二度寝を決め込むことにする。クーラーのリモコンを手探りで手に取り、電源を入れてそのまま目を閉じた』

アオイ「おっきろー!!!」

 アオイ、ツバサのお腹の上に乗り、ツバサ、鈍い声が思わず漏れる。

ツバサ「……なんで、いるんだよ……アオイ」
アオイ「今日! お祭りだって!!」

ツバサ『俺の質問には答えず、幼馴染はただ目を輝かせていた』

ツバサ「祭りって……いつもの神社のやつか? ガキじゃあるまいしーー」
アオイ「行こうよ! ツバサ!!」

アオイ『あたしはまだ、寝巻姿のツバサの右手を勢いよくぶんぶんと振り回した』
ツバサ『……なんで、この幼馴染は、昼過ぎの、こんな暑い中でも、こんなに元気なんだろう……俺には、理解できない……』

アオイ「ねぇ!! つーばーさー!!!」
ツバサ「…………」
アオイ「……ダメ?」

ツバサ『そんなしょぼくれた顔を見せられてしまえば……俺の答えは一つしかない……』

ツバサ「だぁぁぁぁ!! わかった! わかったよ!! 着替えるから、ちょっと出てろ」
アオイ「わーい! やった!! 早くしてね~!!」

ツバサ『アオイは、俺の上から降りると、その場で二回ぴょんぴょんと跳ねると、嬉しそうに鼻歌を歌いながら、軽快な音と共に階段を降りていった』
アオイ『ツバサとのお祭り、それは毎年のことだけど……今年のお祭りは、少しだけいつもと違う、特別なものだから』

アオイ「おばさーん、ツバサ、起きたよー」

 アオイ、少し遠くに話しかけるように。

ツバサ「起きる、か……」
 
 ツバサ、ゆっくりとベッドから起き上がり、軽く伸びをする。

ツバサ『正直、あまり気乗りはしないが……来年は、こんなこともないんだなと思えば自然と体は動いた』